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2020.11.06

FRAGILE セルフライナーノーツ (Ba.中原編) / 中原健仁

メンバーそれぞれの視点で書く
FRAGILE』ライナーノーツ。

俺は順不同でつらつらと書いていきます。
前作でこれやった時も結構な長文になったから、
これから読む方は気をつけてください。
暇な時間にちまちま読むのがいい感じになると思います。

よし、それじゃあいってみよう。


これを書いている今日は、ものすごい気持ちよく晴れていて、
いっちょピクニックにでも行きますか!なんて言いたくなるくらいなんだけど、
宇宙船六畳間号」のデモ音源がYouTubeにアップされた時は、そんなことすら許されなかった。
新型コロナウイルスの感染を防ぐために、外出を自粛しなきゃならんかった。
ピクニックはもちろん、仲間と居酒屋でワイワイしたり、音楽スタジオで練習をしたり、そもそも誰かと会って話をすることが制限されていた。

人に会えないということに不安を抱く人は少なくないと思う。
そんな中で「離れていても繋がっているよ」と歌うこの曲を世に放ったうちのボーカルまじナイスだと思う。
俺ら(メンバー3人)はこんな曲があったことすらほぼ知らなかったけど。それでもまじナイス。


実際に会って話すことは出来なくても、実は大事の人とは想像の中でたくさん会っている。
「もし今度会えたら何を話そうかな。」「新しく始めた趣味を披露してみようかな。」
きっと、あなたの会いたい誰かも同じように、そんな思いを募らせている。
こうして誰かを思い、誰かに思われることは、繋がりだと言えるんじゃなかろうか。
そして現代にはインターネットという名の小さく光る窓もある。
もしかしたら僕らはむしろ、互いに離れたところで、より繋がりを深めたのかもしれない。


そして多分、このアルバムで一番ベースが大変な曲だと思う。
Aメロとアウトロのフレーズは、うまく合わされば楽しいんだけど、
弾きながらドラムのビートに乗れなくなると、
なんか別々の民族が各々踊ってんなってなっちゃう。
これを弾こうと思った方は是非休符を意識してほしい。ドラマーと踊ってみてください。
そしてナイスグルーヴでドラマーと踊れた方は、今度はピックを持ってください。


2曲目の「Enchanté」はピック弾きです。そしてこれもちょっと難しい。


特に気に入ってるフレーズが二つあって、そのうちの一つは1サビ後のリイントロとアウトロの部分。
大からデモをもらってすぐに「こういうノリが合いそう」ってフレーズを送ったら、
かっちょいいバンドアレンジになって返ってきて、すごく嬉しかったのを覚えてる。
“嵐"とか"操縦不能の心”とか、そういう歌詞にもリンクしてる感じがして、今でも思わず弾いてしまうフレーズの一つ。

もう一つが大サビ前のフレーズ。
これも「今 空に飛び込んでゆく僕ら」っていう歌詞のように、
スゥーっと高音に駆け上がっていってパッと視界が開けるような景色が想像できる。
この曲は特に、音の抜き差しとか曲の雰囲気をみんなで作っていけた感がある。
ちゃんとバンドが成長して、メンバーそれぞれが自分の強みを発揮していて、
こういうアレンジができるようになったことが嬉しかった。


アレンジで言えば「ワーカホリック」と「風と船」は、何パターン作ったか分からないくらい考えた。

どっちも4年前にはじめてデモをもらっている。
ワーカホリック」は、日常を過ごす中で溜まっていくモヤモヤを吐き出しているような歌詞で、
その歌詞に対してのアレンジが、当時はどうもうまくいかなかった。
ため息をそのまま言葉にしたような歌詞なのに、サウンドはやたらと楽しげで、
思い返してみればその不一致さが不気味ですらあった。

同じように「風と船」も、こんなシンプルなアレンジでいいのかって、当時は自信が持てなかった。

だけど、歌詞もメロディーもものすごく気に入っていたから、
4年越しに、しかも別曲の作業をしていた大以外の3人で、真ちゃんを軸にアレンジを進めた。
ベースフレーズを2人に相談してみたり、サビにキメを入れてみたらそこにドラムを合わせてくれたり。
音の伸ばし方を長くしたり短くしたり、コードを変えたり、なんやかんやと模索しまくった。
ある時に、出来上がったそれらを大に聴かせたらすごく気に入ってくれて、ついに収録が決まったという。
だから、この2曲は特に達成感がある曲だし、音に隙間を与えたからこそ、立体感が生まれたんだと思う。


俺は昔から音の隙間っていうのが気になるタイプで、
隙間があるなら何かフレーズを差し込みたいってなりがちだった。
だけど、年々好む音楽が広がってきて、このバンドの曲の幅も広がってきて、
少しずつその良さがわかって、知らぬ間に吸収しているのかもしれない。

だから今回のアルバムは、音の隙間を楽しむ曲が多い。


個人的には「Fragile」でもそれを強く思った。
最初に作ったフレーズからどんどん動きを削っていって、
最終的に「どーーーん…」ってひたすらに伸ばすベースラインになった。
ただこのひたすら伸ばすっていうのが案外難しくて、
少しでも音を途切れさせる弾き方をすると、それだけで雰囲気が壊れてしまう。
鋭くなく、柔らかく。よりダークな音になるように。
余計なフレーズを挟まず、空間を支配するように弦を弾く。
低音が広がって音に包み込まれる感じが出せて、すごく満足してる。


チョコレート」は最初、自分の家でベースを録音した。
「打ち込みのベース音でいくかもしれないけど、弾いてみてもらっていい?」
っていう話があって、面白そうじゃないかと思ってすぐにOKした。
シンプルなフレーズだけど、音の伸ばしどころや切りどころがやっぱり難しくて、
だけど弾いていてすごく楽しい曲になった。まあ結局、音源は打ち込みなんだけど。笑
ライブは自分でベースを弾いて演奏してるから、音源との違いも楽しんでもらえると思う。

歌詞を読んですぐは、「これって男女の話なのかな」って思ってたんだけど、
何度か聴いてるうちに、ああ男女に限った話じゃないかもと思い始めた。
相手を思うあまりに踏み込みすぎて、逆に相手を傷つけてしまって、
それが怖くて近づき辛くなってしまったり、かといって距離が離れていくと不安になったり。
だけど、そうやって距離を縮めたり離れたりするのは、相手を本当に大切に思っているからこそだと思う。

そもそも興味のない相手とは、言い合いにすらならないから、それ以上相手を知ることもない。
同じ場所に居続けるのは感覚が麻痺してしまうもので、
甘い日々だけを味わっていても、きっとその甘さを見失ってしまうし、それ以上知ることはできない。
相手を知りたいと思うからこそ、苦い日々はやってくるし、また甘さに気づけるんだと思う。
お互いに思いやることで、ふたりにご褒美がもらえる。

って、俺は解釈しました。すごく好きな曲です。


そんな「チョコレート」から「ベランダ」へ。

この主人公も相手に触れることを恐れていて、
部屋の中でも外でもないベランダという場所が似合う、同じく半端なやつだと言っているけど、
「傍に来て 傍に居て」って思える、すごく素直なやつなんだなと思う。
「心で靴を履く言葉 喉元で立ち止まっている」っていう部分がすごく好きで、
パッと思いつくなんでもない言葉ならスッと出ていくけど、
心の中で何度も反芻するような言葉って、うまく出ていかないんだよね。
きっと誰しもが感じたことのあるモヤモヤを、
松本大らしい独自の言葉遣いで代弁してくれてる一文だと思う。
いろんな人に寄り添える言葉。
俺は音で表現するしかないから、この主人公みたいな思いを抱えてる人に向けて、
「大丈夫だよ」って気持ちを込めて、いつも演奏してます。

余談ですが、アザージャケットで描いたベランダは、一階建てのベランダになっています。
けど本当は丘の上にある小洒落た三階建てくらいのベランダが描きたかったんです。
俺の画力じゃあれが限界だったんです。
これを読んだ人は「大丈夫だよ」ってやさしく脳内で補完してください。



分かってる。このライナーノーツめっちゃ長いってこと、俺ちゃんと分かってる。
大学生の頃のレポートを思い出しながら書いてます。

書き始めるのめっちゃ遅いくせに書き出したら止まらなくなるあれ。
もうこれ何日かに渡って書いてるんだけど、気付いたらツアーが7公演も終わってました。
冒頭で「天気が良くてうんぬん」言ってるけど、夜を迎えたどころか季節変わってきちゃってる。


こんなに長くなって申し訳ないと思っているけど、もう少し続きます。



ツアーが7公演も終わってしまったので、ライブでの収穫もたくさんあります。
EYE」はこのアルバムを象徴してる曲だと思ってるんですが、正直ライブであんなに化けるとは思わなかった。
「この曲をライブで皆んなで歌えたら、きっとすごい景色になるんだろうな」
なんて思っていたから、声を発することが出来ないこのツアーでどうなるのか心配だった。

だけど、この曲を演奏している時のみんなを見ていると、声を出していないはずなのに、すごく熱を感じる。
これを共鳴と呼ばずしてなんと呼ぼうかってくらいに。
そんな熱を感じるからこそ、子どもの頃から大好きなベースを、あの頃の無邪気な心のままで演奏出来てると思う。
だからもはや、この曲に関してはライナーノーツというか、ライブに来てくれたら一発で分かると思う。
上手いとか下手とか関係なく、キラキラした気持ちがどれだけ素晴らしいことか。
汗だくになりながら全力で「いいだろ!」って思いながら歌ってます。
そういう時の自分の姿は、誰になんと言われようが絶対に間違ってない。スーパーイケてる。


アルバムに収録されて化けた曲「ホワイトライクミー」。
先行配信された時から録り直した音があるというのもあるけど、
穏やかな曲が続いたあとにくるこの曲は、より輝きを増しているように思う。
曲の構成もそうだけど、グッとこらえてから放たれる良さがあるなぁって実感した。
ベースラインは緊張と解放を意識して作った。
Aメロはバスドラムとしっかり合わせてタイトなリフレイン。
Bメロで伸びのあるフレーズで緊張を解して、サビで一気に解き放つ!
この流れがうまくいってて、めちゃくちゃ気に入っています。


最後に「いつものこと」。
俺は昔から、日常の中のありふれた物が入っている歌詞が好きなんです。
この曲で言えば、”たばこ”とか”ギター”とかそういうの。
物には人それぞれの思い出があるから、自分の思い出と一緒に歌詞の世界に溶け込める感じがして。
自分の経験と重なる部分を感じるとそれが共感になって、
深く共感できた話っていうのはその人の支えになり得ると思うんです。

なんだかどうしようもない日常を送っている時があって、
それを吐き出したいのに、言葉が見つからない。
そういう時に「いつものこと」を聴くと、自分のモヤモヤが言葉にされていて、
心の中が整理されて、気持ちがゆるやかに落ち着いてくる。
誰かと会わずとも、発散するために身体を動かさずとも、
4分2秒で、気持ちが落ち着いてくる。これって本当にすごいことだと思う。

大はこの曲を自分の日記みたいなものだって言っていたけれど、
だからこそ誰しもに響く曲になった。人それぞれの「いつものこと」がある。
心から名曲だと思ってます。


最後に、このアルバム『FRAGILE』は、総じてメロディーが強いアルバムになったと思う。
メロディーが強いっていうのは、ただ歌のラインが美しいっていうだけではなくて、
ギターやベースやドラム、ピアノも電子音も全部、それぞれの音が引き立たせあうことで初めて得られるもの。
だからこのアルバムは、メンバー全員でちゃんと形に出来た作品だと思ってる。
そして俺は歌詞を書いているわけでは決してないけど、
何かを決心して一歩踏み出すまではいかずとも、
俯いてしまった顔をちょっとあげてみるかって思ってもらえたら、
自分で責めすぎている心を少しでも気遣ってもらえたら、嬉しいです。
レコーディングでもライブでも、いつもそんなことを思いながら弾いてます。



…ということで、俺の視点の『FRAGILE』を書いてみました。
とんでもなく長くなってしまった。ここまで読んでくれて本当にありがとう。
数年、数十年先でも聴きたいアルバムになりました!無事にリリース出来てよかった!
改めて、どうぞよろしく!


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