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2021.12.16
Dai Matsumoto Interview about『A Dream Of Dreams』 / OTHER
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『A Dream Of Dreams』――「夢から醒めた夢」。 これはLAMP IN TERRENという名を冠したひとつの節目となる作品であり、そしてワンマンライヴのタイトルである。フロントマン松本大が刻んだこのタイトルには、今語るべきすべてが詰まっていた。
「この世の微かな光」という意志を込めたバンドの旅路、彼が見続けていた夢と憧れ、辿り着いた音楽への眼差し、そして未来へ心が動いた瞬間と新たな決意――このタイミングだからこそ訊くことができた、松本大の虚飾のない言葉を是非見届けて欲しい。LAMP IN TERRENのフロントマンとして、ラストインタヴューを此処に贈る。(text&interview:黒澤圭介)
俺の魂はLAMP IN TERRENの中にあった
■今回のインタヴューは12月8日、つまり『A Dream Of Dreams』というEPのリリース日に行ってます。まずはリリースおめでとう。既に色々な反応があったかと思いますが、どうでした?
「ありがとう。……よかったと思うな、うん」
■今までのリリースとは、また違うものだったと思います。大喜(川口大喜/Dr.)の脱退発表、そして大(松本大/Vo.&Gt.&Pf.)がツイキャスを通して伝えた、LAMP IN TERRENというバンドの活動を今年で停止させるという発言を経てのリリースだったわけで。
「俺自身は特別な何かを感じてはいないんだけど、リスナーはやっぱりそうなんでしょうね。『これが最後か』って声はやっぱり多く見たし……でも俺としては『LAMP IN TERRENとしてはね?』って気持ちで見てたかな」
■「LAMP IN TERRENとして」という言葉そのものが、今のキーワードなのかなと思っていて。
「うんうん。今、自分の中で、ものづくりの価値観が変わってきてるんだよね。バンドというよりは、松本大という個人的な感覚で曲を創っていて。音楽を何処で増幅させるのかって話なんだよね。今までは、LAMP IN TERRENという拡声器を使って曲を出してきたという感覚がずっとあったけど、これからはそうじゃなくなるというだけでーー俺としては終わるという感じはないんだよね。ひとりの人間が人生を続けていく上で、何処から曲を出すのかが変わるっていうだけ。だから、これまでと同じようにリリースすることができてよかったという感じかな。特に“カームダウン”に関しては披露してから10カ月くらいお客さんを待たせていた曲だから、届けることができて単純によかったと思う」
■今回のEPに収録されている楽曲は、すべて今年制作したものだよね。音楽性自体は異なる3曲だけども、どれも大が自分のことをより強く見つめた末の楽曲になっているなという感触があります。
「そうかもしれないね。だからこそ、ある意味で聴いてくれる人にとっても自分のものとして聴いてもらえてるのかなとも思う」
■まさにそう思う。バンドサウンドだけでやっていた時代とは一線を画すけど、凄く肌感を感じる暖かみがある。それはきっとダビングで重ねた大の声の存在や、しなやかな歌い方がそうさせているのかなと思った。大自身のパーソナリティが変化してきたところも大きいよね。
「あんまり、エンタメみたいな気持ちで曲を創っていないからかも。精神的な話で言えば、ここ10年間でようやく高校生くらいになったかな。高校生くらいになると、大抵の人たちは自分の進路を考え始めるじゃない……大学に行くとか、就職するとか。そういうタームに、29歳でようやく入ってるなって感じがする。ある種の憧れとか、バンドってカッコいいとかーー楽しいイメージだけでやってきたって感覚が凄くあるから。続ける上での苦しみとか、人付き合いの面で衝突とかは沢山あったけど、誰かに音楽を歌う/届けるってことがどういうことなのかを考えて社会と向き合う/関わるってことを最初に考えられたのって『FRAGILE』(2020年10月リリース)からだったりするんだよね。『fantasia』(2017年4月リリース、3rd Album)ぐらいから聴き手のことを考えて創ってるって口では言ってたけど、結局どれだけ自分の話を聞いてもらえるかに注力していた気がする。だから、ちゃんと『FRAGILE』以降の延長線上に今回のEPはあるなと思う」
◾️これは何度も話してきたことのような気がするけど、“いつものこと”(2019年12月リリース『Maison Diary』収録)という楽曲は、やっぱり大きな転換期だったのかなと思う。今までになく自らの赤裸々な日常と感情を曝け出したあの楽曲は、大の想像を遥かに超え、聴き手にとって「自分ごと」として受け入れられたじゃないですか。
「そうだね、それまではそういうことはしなかったからね」
◾️自分が抱えている想いや感情は、何も自分だけのものではないんだなという実感を持てたと思うんだよね。だからこそ、自分のことを歌っていても、聴き手/社会が存在する歌に変貌していったのかなと思う。
「うん、もっと早くそうなりたかったとは思うけどね(笑)」
◾️(笑)。そんな変化を経て辿り着いた最新作は、バンドとしてではなく個人的な感情で楽曲を創ったと言っていたね。“カームダウン”の<他のどこにもない僕だけの世界だろ>っていうラインや、“ニューワールド・ガイダンス”の<全部捨て去って>という言葉がとても印象的で。聴き手にとって自己投影できる言葉ではあるのだけども、今一度、大が自分自身を取り戻そうとしているニュアンスを強く感じたんだよね。
「……自分の印を創るって感じだったのかもしれない。それぞれ楽曲のテーマが大前提としてある上で……その発想自体が自分のものとして曲を創っていたということかもしれないんだけど、何処か自分に言い聞かせたい部分があって、出てきた言葉かもしれない。……ぶっ壊れそうな感覚が最近凄くあったから。じゃあ、壊しちゃえ!っていうのはあったかもしれない。投げやりになっているってわけではないんだけど」
◾️頭の中が煩いって感じかな。
「そうね、それはある(笑)。昔よりだいぶ煩くなったと思う」
◾️それはなんでだろうね?
「うーん……独りで生きているわけではないって自覚したからかな」
◾️大に訪れた他者や社会と生きているって自覚は、眼に映るものや自分の中にある感情の情報量が何十倍にもなるってことで。外的要因がある故に、自分という輪郭の中に対してより深く入っていけてるのかなと。
「そうね、潜ると浮かんでくるって作業が曲作りの中に生まれたって感覚はあるかも。前まではずっと見渡している感じだったんだよな。バーっと広い図書館みたいな場所で、自分に必要なものを手に取っていくって感じで曲を創ってた。その時はメロディに言葉がハマらない!みたいな精神的なストレスがあって。でも、今回は自分の中を探っていく/潜っていくって感覚ーー精神的なストレスはないんだけど、潜って見つけて、潜って見つけて……スポーツみたいな感覚だった。ーーさっき言ってくれた自分を取り戻す感覚ってのは、バンドから自分を取り戻すってことだったのかもな。俺の魂って俺の中になくて、LAMP IN TERRENの中にあったの。それをまた自分の中に宿すっていうことはあったかもしれない」
◾️まさにそう思う。この言葉を聞いた人は、大がテレンを続けることに疲れちゃったのかな?と思ってしまう人もいるかもしれないけれども、そういうことではないよね。ひとりの人間として楽曲を創っているはずだけど、会社員が会社の方針に自然と従っているように、テレンとしての正しい音楽の姿みたいなものが、大の中に入り込み過ぎてしまっていたのかなと思ってて。大が大として創作をするというところに、立ち戻る音楽が生まれたのは必然なのかなって思う。
「うん、それはすげぇわかる。確かに」
区切りであると同時に続いていく感覚
◾️その上で訊きたかったのは『A Dream Of Dreams』というタイトルについてなんです。テレンとしてラストとなるワンマンライヴやEPには、何故このタイトルを付けたのかな?
「これは、俺の始まりに物凄く関わってくるというか。中1の時に、学校の行事の一環でお芝居をしたのね。真ちゃん(大屋真太郎/Gt)は確か体育で跳び箱とかをやってて(笑)。その他に、パソコンでCGを作るっていうコースと演劇のコースがあったんだよね。俺は面白そうだなって思って、演劇のコースを選んだんだよ。そこでやることになったお芝居が『夢から醒めた夢』っていう劇団四季がやっているお話で、英語のタイトルだと『A Dream Of Dreams』って何かで見たことがあったんだよね。ーー俺のステージの原体験ってそこだから。学校の体育館の上。当時は歌うことは好きではなかったけど、何かを表現するっていうことの原体験はそこで、テレンとしては最終的にリキッドルームっていう場所になる。俺の表現するってことへの憧れは、あの学校の体育館で始まったから……自分の区切りとなる言葉を使いたかったんだよね」
◾️自分の原体験と繋がったタイトルであるということは、やっぱり立ち戻りたいという気持ちと、新たなスタートへの想いがしっかり存在していたんだね。辿ってきた旅路に一度区切りを打つには、ジャストな言葉だったんだ。
「振り返ってみると、今まで俺はアルバムごとに試練をクリアしてきたって感覚があって。『silver lining』(2015年1月リリース、1st Album)と『LIFE PROBE』(2015年7月リリース、2nd Album)の頃は、基本的に憧れを源泉に曲を創ってきて。3rdの『fantasia』では音楽の音像感がもたらすものは何かーー日常の中にあるものからファンタジーを見つけて、音で表現するという試練。『The Naked Blues』(2018年12月リリース、4th Album)では松本大が松本大である意義ーー詩人として自分はどうなの?っていう課題があった。自分の空想の中で曲を創りながら世界を見て、『バンドってカッコいいよね』『世の中っていいよね』『歌うって素晴らしいかもね』とか思いながら曲を創っていた自分に、『本当にそうなの?お前逃げてるだけじゃね?』って問いかけがあったのが『The Naked Blues』だった」
◾️そこから次の『FRAGILE』で大きな変化があったと。
「そう。社会とどう向き合っていくのかーー『お前は結局人に音楽を届けているわけだから、孤独でい過ぎるのはよくないよ、社会と向き合わなきゃ駄目だよ』って課題を持ったのが『FRAGILE』だった。だから今回のEPは、俺の中でその全部の気持ちを持ちながら、感情だけで曲を創らないってことが課題で。どうしても俺は気持ちで曲を創ってしまうから、俺の曲って俺が歌って一番力を発揮する曲たちだったと思うんだよね。それはいいところも悪いところもあるんだけど、音楽である以上は他の人が口ずさんでも、凄い名曲になるものでありたいって思ったの。他の人にも聴くだけじゃなくて歌って欲しいって考えた時に、今の自分の曲の創り方じゃ駄目だって思って、音楽的に自分の気持ちの使い方を解釈した結果が今回のEPだった。此処から、ようやく俺は自分のことをミュージシャンって言えるんじゃないかって思ってて」
◾️職業として、ということだよね。
「そう。だから区切りをつけるんだったら、これまでの音楽をやってきた15年、もっと言えば演劇から数えると16年ーーその最初と最後が同じものだったら自分の中で気持ちがよかったんだよね。区切りであると同時に続いていく感覚があるから、このタイトルにした」
◾️うんうん。実は、俺は「Dream」という言葉自体にドキっとしたんだよね。言ってみれば、LAMP IN TERRENというものは夢みたいなものだったのかな?とも捉えられるじゃない。子供の空想ーーもっと悪い言い方をすれば遊びのようなもの。続いていく感覚以上に、夢を見ていられる最後の日だよ、ってタイトルに感じたんだよね。
「まぁ、それは往々にしてあるよ(笑)。表裏一体だからね。自分でも滅茶苦茶思ってたよ、夢の終わりだなって。……でもその先も続いていくのよ、バンドというもの自体は続けるという選択を取ったから。それでも、自分が小っちゃい頃から掲げていた夢とか理想ってものが終わるんだろうなっていう想いは凄くある。ただ……終わらせることを自分自身の手でできるとも思う。このタイミングに区切りとして杭を打つのは、俺としては凄く筋が通ってるのよ。リセットボタンを押したいわけじゃないし、俺は終わるとも別に思ってないんだけど、LAMP IN TERRENという枠から飛び出すっていうのは、今の自分だからこそ必要なことだと思う。だって、夢とか幻想とか理想っていうものでLAMP IN TERREN自体が創られたものだから。ただの一人間になることが、今俺にとって必要なことなんだと思うんだよ」
LAMP IN TERRENは記憶だった
◾️夢から醒めるきっかけは色々あったと思うけど、大喜が抜けるってことは間違いなくそのひとつではあったと思うんだ。やっぱりこのバンドは、4人で鳴らす音楽って感覚が大の中にはあるんだよね?
「うん。それこそ、大喜が脱退の話を言ってきて一気に眼が醒める感覚はあった。大喜が辞めるって言ってなかったら、俺は今でも夢を見てると思う。今まで考えてなかった、凄くリアルな話を介入してくるなって感じだった。ふと自分がやっていることを考えてみると、音楽を創るってことよりも、この夢を続けることーーメンバーとの関係性を続けていくことの方にプライオリティが高くなっている感覚があって。だから、他のやつがドラム叩いてもしょうがないなって思ったんだよね。曲は曲で別に生きているものだとは思うんだけど、LAMP IN TERRENっていう枠自体が物凄く強制力のあるものになっちゃってたっていう」
◾️大喜も同じようなことを言ってたんだよね。最終的に、大とふたりで話していた時に「もういいんじゃない?」って大に言われて、肩の荷が降りてスッとした感じがしたと。
「うんうん、言った。あいつは勝手に色々なものを背負っていたからね」
◾️その大喜の感覚は、何かから解かれるという感覚だったんだと思うんだ。だからこそ、テレンっていう夢を見続けようとしていたのは、大だけではなかったとは思うんだよね。
「実は大喜から脱退の話がある前に、ちょっとバンドやスタッフと揉めたことがあったのよ。ある場面で俺だけがいろんな意見を言っていて、メンバーが何も言わないでいたのね。バンドにとって凄く大事な話だったのに、お前ら本当にそれでいいのか?って俺はその時思って。そこで『お前らが本当にやりたいことってこれじゃないんじゃないの?』って問いかけを俺がメンバーにしたことから、この話って始まってるんだよね。必死だったのは俺だけだったのかな?って……期待してた自分がいて、ガッカリしたって言う感覚はあった。だから俺はシンプルにこのままではよくないって思ったし、大喜が脱退の話をしてきたのも凄く理解できた。正直、真ちゃんとか健仁(中原健仁/Ba)も同じことを言ってくるかなと思っていたけど、ふたりはバンドを続けたいって言ってきたから、そこは改めて考えようってなったんだよね。もちろんテレンを続けようって案も最初あった……でもね、LAMP IN TERRENっていう名前が持っている枠には凄く強制力があって、何処を向いてもワクワクできなくて光が見えないって感じがあったのね。で、結果としてテレンの活動は停めて、違う形でバンドをやっていくって決断を選んだ。だから『いいんじゃない?』って大喜に言ったのは、俺は『知ってたよ、だと思ったよ』って感覚だった。大喜の抱え方って凄い歪なのよ」
◾️うん、しかも大喜って実は繊細で思い悩むタイプだからね。
「あいつは、ずっと俺をライバル視してたと思う。昔はバンドの中心人物として活動していた大喜と、今バンドの中心にいる俺ーー大喜は凄い髪を伸ばしてみたり、髭を生やしてみたり、兎に角、俺には従わないっていうスタンスがずっとあった。ただ、俺はそれでいいと思ってたのね。でも何処かのタイミングから、そこに疲れたのかなぁ……わかんないけど、凄く距離を取るようになったの。だから俺も『いいんじゃない?』ってあいつに言ったと思うんだよね。解放したくなったというか。仮に俺がソロのアーティストとして3人を従えている状態だったら、こんな色々考えたりしないと思うのよ。たぶん俺が一番バンドに固執してて、居場所だと思ってた。だから曲作りもするし、予算がなければMVも自分で考えるし、ジャケットも描くし、グッズも作るーーやらなきゃいけないことは、全部やってきたのよ。ただ、そういうところも含めて凄く子供だったなって今は思う。誰かに何かを任せることができれば、もしかしたら違ったのかなとも思うよ。今、結局どっちが正しかったとは言えないけど」
◾️LAMP IN TERRENはバンド名に「この世の微かな光」っていう意味を宿していて。そして、バンド名に凄く忠実なバンドだったと思うの。
「……そうだね」
◾️ここまでバンド名に忠実にやってきたバンドって中々ないと思うんだよ。音楽性と共に歌詞のコアみたいなものも変化してしまうことは往々にしてある話で。でも、テレンは音楽性が変わっても、バンド名が持つ意味合いの傘の下で歌を歌い続けたと思うんだ。でも、聴き手が携えるランタンのような音楽であり続けるためには、そもそも自分たちが携えている光がなくなっちゃたら、その音楽は創れないじゃない。
「……うん、そうだね」
◾️その携えてた光の一番根幹にあったのが、大にとってはメンバーと一緒に過ごしてきたこと時間そのものだったのかなって思うんだよね。
「そうだね、記憶だったね」
◾️ひとりのメンバーが共に過ごしてきたステージから降りることで、その記憶は一回途切れる。だからLAMP IN TERRENという名前での活動を停止します、という選択はとても筋の通った話だと思います。
「うん、俺も自分なりの筋の通し方をしたと思ってる」
俺は未来に必要な物しか選ばない
◾️だからこそ、テレンという夢の終わらせ方はとても重要になるよね。まだまだ続いていく大たちの音楽人生にとって「終わる」という言い方は正しくないかもしれないけど、それでもやっぱり「終わる」日がリキッドルームでのライヴになると思うんだよ。
「うん。それでも、俺は未来について考えるっていうテーマしか持ってない。だから過去には縛られない。普通ラストライヴって、過去から現在までの楽曲を満遍なくやるものだと思うんだけど、俺は未来に必要なものしか選ばない。俺の一存のように聞こえるかもしれないけど、ここは全員が共通認識としてそう。バンドが終わるから、大事にしてきた15年間を攫ってみんなの思い出と共に過ごすっていうライヴが、いわゆるバンドシーンにおける真っ当さだと思うのね。俺はそんな綺麗な終わり方をするつもりはないんだよ。『この曲が聴きたい』みたいな感情を持って、ライヴに来ることは価値があることっていうことは凄く理解もできるんだよね。でも俺はそれを凌駕するくらい、未来のことを考えるっていうセットリストにしたいし、そういう歌を歌いたい。そういう想いがないなら、俺はLAMP IN TERRENとしての活動を終了しますってわざわざ言う必要さえないと思っているから。だから、そんなライヴになるんじゃないかなって思ってる」
◾️過去を攫うという話で言えば、ベストアルバム『Romantic Egoist』を全曲リテイクで制作したよね。どうしたって今のタイミングでベストアルバムという話を聞くと、過去を精算するためのものとして捉えられかねないと思うんです。ただ、この制作が決まったのは大喜の脱退も活動停止の話も出る前だったじゃないですか。
「本当にそんな予定はまったくなかったし、単純に楽しい企画をやろうっていう意識だったからね。結果的に、自分たちにとっても整理をする時間になってしまったというか。正直、大喜が辞めるってなってから、なんでこのアルバムを制作するんだろうって思ったしね。そういうことをしたかったんじゃない、だからこういうタイミングで辞めるなんて言うなよ!とも思ったし(笑)。……でも創ってよかったと思うね。お別れ作業とかじゃなくて、これはタイムカプセルなのよ。だから創るべきものだったと思う、個人的にはね」
◾️LAMP IN TERRENという名前も音楽も消え失せるわけではないし、大はもちろん、健仁も真ちゃんも大喜も音楽を続けていくわけだから、お別れのためのものとは違うよね。それに加えて、今リテイクという形で過去の曲と向き合っていなかったら、生まれ変わったバンドで過去の曲を演奏する可能性がゼロになってしまったんじゃないかとも思った。その過程を踏んだからこそ、未来でも鳴らしたいものが見つかったかもしれない。
「うんうん、確かに。それはそうだね」
◾️だからこそ、タイミング的にはたまたまだったかもしれないけど、今とても大切なものになったんじゃないかと思う。そんな未来への道標にもなるベストアルバムって、あまり例を見ないんじゃないかな。
「ーーうん、やってよかったなと思うよ」
ロックバンドって生き様だと思ってる
◾️そこで、改めて『A Dream Of Dreams』ーー『夢から醒めた夢』という言葉とワンマンライヴの話に戻らせてください。LAMP IN TERRENというものは、お客さんとも共に創り上げた夢だったと思うんです。“ニューワールド・ガイダンス”という最新曲にも<夢が醒めた後の世界>という歌詞があるけども、リスナーと一緒に夢から醒めるための時間になるのかな。
「28日のライヴって、LAMP IN TERRENってものを背負ってはいるけど、ステージに立っているのはもうLAMP IN TERRENではない気がする。メンバー全員そうなんじゃないかな、と思うよ。テレンとしてではなく個人の旅立ちーーだからこそ、さっき過去に拘らないで未来のことを考えたいって言ったんだよね。少なくとも俺はLAMP IN TERRENの松本大ではなくて、ただの松本大としてステージに立つと思う」
◾️夢見心地の時間から抜け出した4人が、夢の中で創った楽曲をステージで鳴らす、最初で最後の時間になるかもしれないね。だからこそ、これからも続いていくストーリーの一部であるという側面がありながらも、ひとつの物語の第1章が完結するような日になればいいな、と思ってます。
「過去を雑に考えてるわけではないんだよね。まだセットリストも決めてなくて。ただ、LAMP IN TERRENの歴史みたいなものを完全に無視したライヴをすれば、当然反論も出るとは思ってるしーーそこに勝てるかどうかかな。一人ひとりの中に、俺らの好きなところ/嫌いなところってあると思うんだよね。この曲好きだったのにやってくれないのか!とかさ。自分の筋を通すために、俺はそういう想いを凌駕しなきゃいけないと思う。『この世の微かな光』っていうバンドをずっと全うしてきて、そこから新しい世界に向かうと同時にバンドを終了させる上で、優しく受け止めてもらう方法も幾つか考えつくのよ。でも、納得してもらえるかな?なんて安パイな方法で、自分の通して来た筋を曲げたくないっていう想いはあるのね。だから、その想いに気づいて欲しいなって思う。ーーでもね、今回の対戦相手って日本の歴史みたいなところがあると思うんだよ(笑)」
◾️ははは(笑)。確かにそうかもね。
「日本のチャートに存在している音楽も世界から見ると異質で。そのチャートにいる音楽は耳触りがよくてキャッチーなもので、ちゃんとお客さんに対して気が遣えるものなのよ。だけど、俺は自分の筋を通していたくて、いつも自分の行動に理由が見つかるまで行動してこなかった。だから、傷つける形になったこともあったかもしれない。だから、社会に向き合えるようになった今の自分の対戦相手は日本の文化なんだよね」
◾️今こそ立ち向かえるって言い方もできるよね。ただ、シンプルに考えるとほとんどのお客さんはLAMP IN TERRENという存在の終焉を美しい思い出にするために、ライヴ会場に来ると思う。そのお客さんの感情を凌駕して、この先の4人の未来にワクワクするという感情を抱かせることができるかーーそれができれば、きっと大にとっても、メンバーにとってもいいライヴだったと言える日になるんだろうね。
「そうだね、そう思う。だから、感動させる気ってないのよ。特に最近の日本は空気の読み合いで成り立っていると思うことが多いのね。自分の感情を殺して、息を潜めて生活している人もいる。だからこそ、中途半端な言葉を俺みたいな立場の人間は使っちゃいけないと思う。なんとなく『こう言っておけばいいだろう』みたいなものづくりはしたくない。ロックバンドって、俺は生き様だと思ってるから。真剣に向き合った上で、自分の生活から出てくるようなものを曲にするーーそういう生き様を見せることで、ようやく誰かの生活に寄り添うものが創れるんじゃないかと思ってて。今まで15年音楽をやってきて、どの瞬間も滅茶苦茶死ぬ気でやってたと思うのよ。一生懸命憧れたし、一生懸命自分をぶち壊してきた。対応して、鍛えてきた。だから、バンドマンとしての意地は絶対通す」
◾️まさにベストアルバムのタイトルの『Romantic Egoist』だね(笑)。
「そうだね、そうかもしれない(笑)。めっちゃ自信はあるんだけど、大いなる不安もある……でも、全員を送り出したいな、俺は」
◾️みんなで一緒に夢から醒めることができるかどうかは、4人に懸っているね。
「いやその役目は俺だな。誰にも譲れないのよ。で、他のメンバーも絶対そう。お客さんもそれぞれ誰にも渡せない正しさで向かってくると思う。ただ、ここで話したのは松本大の考えであり言葉だから、今日話した話は全部俺が背負っていくよ」
◾️会場にいる全員が未来に対してワクワクしたら、きっと正解だよ。いい夜を期待しています。
「確かに! そうだね、頑張るよ」
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ワンマンライブ『A Dream Of Dreams』
12月28日(火)東京・LIQUIDROOM ebisu
19:00START予定配信ライブチケットはコチラ
※12月31日(火)23:59までアーカイヴ視聴可
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2020.11.18
FRAGILE セルフライナーノーツ (Gt.大屋編) / 大屋真太郎
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こんにちは。大屋です。
つらつらと書いていたら長くなりました。すいません!
曲に対しての解説風に見える部分が多いかもしれませんが、あくまでこれは大屋の感想みたいなものです。
作詞作曲者の(大の)意図とはズレる部分があったりするかもしれないので、ご了承ください。自由なセルフライナーノーツです。
1 . 宇宙船六畳間号
想像力というのは本当に人間に与えられた素晴らしい能力だなと思うのですが、情報が多すぎて溢れかえってる現代だと、ついつい想像することを忘れがちになってしまうものだと思うんです。
自分の身の回りの世界は宇宙みたいに広いけど、一方で見える範囲は狭く限られているので、知らないことに怯える必要もないですし、想像力があれば人との繋がりは距離なんて関係ないし、途絶えず繋がっていけるものだと思います。
このSNSが発達してきた今の時代のImagineみたいな曲だなあと思います。2 . Enchanté
風が吹く外の世界では常に世界が変わり続けていて、「自分を変えねばならない」「成長していかなければならない」そんな脅迫観念に近いものに追い回される中、どこに行けばいいかもわからなくなったりもするけど、正しさとかそういうのを捨てて風の吹く方へ流れて行けばいいんじゃないかなと思います。
すべてのものは少しづつ変化していて、その人やモノに対して初めて相対するような気持ちを持つことは大事だよな、と思います。
デモではサビで転調したりはしてなかったけど、もっとこのサビの爽快感を強調するにはどうしたらいいかなと思った時に、転調させてみたら気持ちよかったです。3 . ワーカホリック
「なんでもない日常こそ大切なんだよ」なんてどこ向いたって聞こえるけど、実際自分の生活だったりを見るとどうにも思い描いてたイメージと違ったりしますよね。
でもテレビで取り上げられるような不幸なことばかり起こってるわけじゃない。ただなんとも言えないけどなんか憂鬱。そんなブルースソングです。
この曲は4年位前にデモがあったんですが、当時ベースとドラムのアレンジに苦戦して完全にボツになりそうだったんですけど、頑張ってサルベージできて嬉しいです。
コードがそもそも少し暗い雰囲気を持っていて、でもビートは楽しげ。歌詞はなんか憂鬱。なので全体が明るくなりすぎないように・・・この曲はほんとにトライアンドエラーを繰り返して大変だったけど楽しんで作れてよかったです。4 . EYE
自分というのはどこにあるのか?という問を考えた時、極端に言えば、個人で存在しているだけだとただの生物としての人間なだけであって、2人以上の社会に於いての自分(の個性)はもう自分の中ではなくその関係性の間にのみ存在するものだと思うんですよね。
自分ていうのは実は自分の中に殆ど無くて、自分が自分だと思ってるものは虚像であることが多いので、見つめるべきはきっと僕じゃなくていいと思います。
ギターソロ、殆ど音に関係ないトリビアですが、RECの時5セントコインで弾いてますので、(フレーズは別として)空気感だけブライアン・メイを感じていただければ幸いです。5 . 風と船
この曲もワーカホリックと同様の時期にデモがあった曲。この曲はアルバムで一番孤独な曲だけど、それ以上に優しさをとても感じる曲でもあって、つい自分に対してストイックになり過ぎる人にこそ聴いてほしい。失敗して挫折したって、弱音吐いたって、そんなの誰が許してくれないって自分が一番許せないだけだったりすることが多いと思うんです。
個人的お気に入りポイントは聞こえにくいですけどラスサビ直前のコードに分数augをブチ込んだところです(A#aug/E)。ただのdimとか入れても良かったんですけど、この曲はあんまり構成を複雑にしたくないけどラスサビ前になにか個性が欲しいと思ってたところ、太古の昔の自分のメモ帳の中にあった一つがハマるんじゃないのと気づいてコッソリ入れました。採用されてよかった。6 . チョコレート
「どんな愛も時にほつれる」っていう言い切ってしまう一言に対して、いやそんなことなくない?って言いたくなるけどそれを否定することは確かにできないなぁと思ったりして、僕はつい考え込んでしまう曲です。でもこの「ほつれる」っていう言い方がミソで、切れるわけではないしまた結び直すこともできるしなぁと思ったりもします。
この曲、ぶっちゃけ俺は殆どノータッチに近いので感想みたいな感じになっちゃうんですけど、逆を言うと手を付ける余地がデモの段階であんまりなかったんですよね。気持ちよくループするコード進行、サビで登っていくコード進行、後半にかけて劇的ではなく緩やかに変化していく構成、時折入るアコギの特徴的なフレーズ。変える必要性を感じなかったけど、無理に変えなくてよかった。7 . ベランダ
社会に身を置いて人と付き合っていく以上、人を傷つけないことなんかできないのに、そのジレンマと脆さをこの曲を聴くたびに僕は感じます。
あとこの曲ラスサビ後半の「傍に居て」の部分のコーラスが重なっていくところの一瞬星になる感じしませんか!?8 . いつものこと
まだ歌詞が完全にできてない時「認めてほしいだけさ 愛してほしいだけさ」ていうサビをデモの段階で歌っててめちゃくちゃいいなと思ったけど、レコーディングの途中で大が「これ一人よがりすぎてどうなんだろう・・・?」とかこういうことを言って迷ってるっぽかった時、必死に「こ、このままでいこうよ」と止めた記憶がボンヤリとあります。大からしたら気恥ずかしいものだと思うけど、そういうもんこそ歌詞にするべきだとも俺は思ってるし、ポロッと出た呟きのほうが叫び声より伝わる時もあると思うんです。9 . ホワイトライクミー
この曲はアレンジしてる時から、サビの開放感をより強調するためにみんな意識を注ぎ続けた曲で、面白い展開にできたと思います。Aメロ、Bメロを繰り返してとにかく焦らし続けて、2分以上経ってやっとサビが来るという、ある意味冒険してる曲だなぁと思います。
この曲は早い段階で配信でリリースされていたけど、アルバムに入ることでまた少し違うメッセージに聞こえてきたのは僕だけじゃないのではないでしょうか?
EYEの言いたいことと、部分的に重なっていると僕は思っていて、アルバムに入ることでより魅力的に聴こえてきた不思議な曲だなあと思ってます。10 . Fragile
「普通」「異常」という言葉はよく対極として使われるものですが、人の認識という点において考えてみると、視点や時代、立場、範囲その他諸々定義によってコロコロ変わってしまう厄介なやつで、「〇〇は異常」「〇〇は普通」と断言することはホントに難しいと思います。一つの手だけだとどうしても不完全な何かしか作れない事が多いので、誰かと手を取り合っていくことでやっと何かが作っていけるものばかりだと思います。わかりにくい文章ですいません!
FRAGILE、たくさん聴いてやってね。
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2020.11.06
FRAGILE セルフライナーノーツ (Ba.中原編) / 中原健仁
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メンバーそれぞれの視点で書く
『FRAGILE』ライナーノーツ。俺は順不同でつらつらと書いていきます。
前作でこれやった時も結構な長文になったから、
これから読む方は気をつけてください。
暇な時間にちまちま読むのがいい感じになると思います。よし、それじゃあいってみよう。
これを書いている今日は、ものすごい気持ちよく晴れていて、
いっちょピクニックにでも行きますか!なんて言いたくなるくらいなんだけど、
「宇宙船六畳間号」のデモ音源がYouTubeにアップされた時は、そんなことすら許されなかった。
新型コロナウイルスの感染を防ぐために、外出を自粛しなきゃならんかった。
ピクニックはもちろん、仲間と居酒屋でワイワイしたり、音楽スタジオで練習をしたり、そもそも誰かと会って話をすることが制限されていた。人に会えないということに不安を抱く人は少なくないと思う。
そんな中で「離れていても繋がっているよ」と歌うこの曲を世に放ったうちのボーカルまじナイスだと思う。
俺ら(メンバー3人)はこんな曲があったことすらほぼ知らなかったけど。それでもまじナイス。実際に会って話すことは出来なくても、実は大事の人とは想像の中でたくさん会っている。
「もし今度会えたら何を話そうかな。」「新しく始めた趣味を披露してみようかな。」
きっと、あなたの会いたい誰かも同じように、そんな思いを募らせている。
こうして誰かを思い、誰かに思われることは、繋がりだと言えるんじゃなかろうか。
そして現代にはインターネットという名の小さく光る窓もある。
もしかしたら僕らはむしろ、互いに離れたところで、より繋がりを深めたのかもしれない。そして多分、このアルバムで一番ベースが大変な曲だと思う。
Aメロとアウトロのフレーズは、うまく合わされば楽しいんだけど、
弾きながらドラムのビートに乗れなくなると、
なんか別々の民族が各々踊ってんなってなっちゃう。
これを弾こうと思った方は是非休符を意識してほしい。ドラマーと踊ってみてください。
そしてナイスグルーヴでドラマーと踊れた方は、今度はピックを持ってください。2曲目の「Enchanté」はピック弾きです。そしてこれもちょっと難しい。
特に気に入ってるフレーズが二つあって、そのうちの一つは1サビ後のリイントロとアウトロの部分。
大からデモをもらってすぐに「こういうノリが合いそう」ってフレーズを送ったら、
かっちょいいバンドアレンジになって返ってきて、すごく嬉しかったのを覚えてる。
“嵐"とか"操縦不能の心”とか、そういう歌詞にもリンクしてる感じがして、今でも思わず弾いてしまうフレーズの一つ。もう一つが大サビ前のフレーズ。
これも「今 空に飛び込んでゆく僕ら」っていう歌詞のように、
スゥーっと高音に駆け上がっていってパッと視界が開けるような景色が想像できる。
この曲は特に、音の抜き差しとか曲の雰囲気をみんなで作っていけた感がある。
ちゃんとバンドが成長して、メンバーそれぞれが自分の強みを発揮していて、
こういうアレンジができるようになったことが嬉しかった。アレンジで言えば「ワーカホリック」と「風と船」は、何パターン作ったか分からないくらい考えた。
どっちも4年前にはじめてデモをもらっている。
「ワーカホリック」は、日常を過ごす中で溜まっていくモヤモヤを吐き出しているような歌詞で、
その歌詞に対してのアレンジが、当時はどうもうまくいかなかった。
ため息をそのまま言葉にしたような歌詞なのに、サウンドはやたらと楽しげで、
思い返してみればその不一致さが不気味ですらあった。同じように「風と船」も、こんなシンプルなアレンジでいいのかって、当時は自信が持てなかった。
だけど、歌詞もメロディーもものすごく気に入っていたから、
4年越しに、しかも別曲の作業をしていた大以外の3人で、真ちゃんを軸にアレンジを進めた。
ベースフレーズを2人に相談してみたり、サビにキメを入れてみたらそこにドラムを合わせてくれたり。
音の伸ばし方を長くしたり短くしたり、コードを変えたり、なんやかんやと模索しまくった。
ある時に、出来上がったそれらを大に聴かせたらすごく気に入ってくれて、ついに収録が決まったという。
だから、この2曲は特に達成感がある曲だし、音に隙間を与えたからこそ、立体感が生まれたんだと思う。俺は昔から音の隙間っていうのが気になるタイプで、
隙間があるなら何かフレーズを差し込みたいってなりがちだった。
だけど、年々好む音楽が広がってきて、このバンドの曲の幅も広がってきて、
少しずつその良さがわかって、知らぬ間に吸収しているのかもしれない。だから今回のアルバムは、音の隙間を楽しむ曲が多い。
個人的には「Fragile」でもそれを強く思った。
最初に作ったフレーズからどんどん動きを削っていって、
最終的に「どーーーん…」ってひたすらに伸ばすベースラインになった。
ただこのひたすら伸ばすっていうのが案外難しくて、
少しでも音を途切れさせる弾き方をすると、それだけで雰囲気が壊れてしまう。
鋭くなく、柔らかく。よりダークな音になるように。
余計なフレーズを挟まず、空間を支配するように弦を弾く。
低音が広がって音に包み込まれる感じが出せて、すごく満足してる。「チョコレート」は最初、自分の家でベースを録音した。
「打ち込みのベース音でいくかもしれないけど、弾いてみてもらっていい?」
っていう話があって、面白そうじゃないかと思ってすぐにOKした。
シンプルなフレーズだけど、音の伸ばしどころや切りどころがやっぱり難しくて、
だけど弾いていてすごく楽しい曲になった。まあ結局、音源は打ち込みなんだけど。笑
ライブは自分でベースを弾いて演奏してるから、音源との違いも楽しんでもらえると思う。歌詞を読んですぐは、「これって男女の話なのかな」って思ってたんだけど、
何度か聴いてるうちに、ああ男女に限った話じゃないかもと思い始めた。
相手を思うあまりに踏み込みすぎて、逆に相手を傷つけてしまって、
それが怖くて近づき辛くなってしまったり、かといって距離が離れていくと不安になったり。
だけど、そうやって距離を縮めたり離れたりするのは、相手を本当に大切に思っているからこそだと思う。そもそも興味のない相手とは、言い合いにすらならないから、それ以上相手を知ることもない。
同じ場所に居続けるのは感覚が麻痺してしまうもので、
甘い日々だけを味わっていても、きっとその甘さを見失ってしまうし、それ以上知ることはできない。
相手を知りたいと思うからこそ、苦い日々はやってくるし、また甘さに気づけるんだと思う。
お互いに思いやることで、ふたりにご褒美がもらえる。って、俺は解釈しました。すごく好きな曲です。
そんな「チョコレート」から「ベランダ」へ。
この主人公も相手に触れることを恐れていて、
部屋の中でも外でもないベランダという場所が似合う、同じく半端なやつだと言っているけど、
「傍に来て 傍に居て」って思える、すごく素直なやつなんだなと思う。
「心で靴を履く言葉 喉元で立ち止まっている」っていう部分がすごく好きで、
パッと思いつくなんでもない言葉ならスッと出ていくけど、
心の中で何度も反芻するような言葉って、うまく出ていかないんだよね。
きっと誰しもが感じたことのあるモヤモヤを、
松本大らしい独自の言葉遣いで代弁してくれてる一文だと思う。
いろんな人に寄り添える言葉。
俺は音で表現するしかないから、この主人公みたいな思いを抱えてる人に向けて、
「大丈夫だよ」って気持ちを込めて、いつも演奏してます。余談ですが、アザージャケットで描いたベランダは、一階建てのベランダになっています。
けど本当は丘の上にある小洒落た三階建てくらいのベランダが描きたかったんです。
俺の画力じゃあれが限界だったんです。
これを読んだ人は「大丈夫だよ」ってやさしく脳内で補完してください。分かってる。このライナーノーツめっちゃ長いってこと、俺ちゃんと分かってる。
大学生の頃のレポートを思い出しながら書いてます。書き始めるのめっちゃ遅いくせに書き出したら止まらなくなるあれ。
もうこれ何日かに渡って書いてるんだけど、気付いたらツアーが7公演も終わってました。
冒頭で「天気が良くてうんぬん」言ってるけど、夜を迎えたどころか季節変わってきちゃってる。
こんなに長くなって申し訳ないと思っているけど、もう少し続きます。ツアーが7公演も終わってしまったので、ライブでの収穫もたくさんあります。
「EYE」はこのアルバムを象徴してる曲だと思ってるんですが、正直ライブであんなに化けるとは思わなかった。
「この曲をライブで皆んなで歌えたら、きっとすごい景色になるんだろうな」
なんて思っていたから、声を発することが出来ないこのツアーでどうなるのか心配だった。だけど、この曲を演奏している時のみんなを見ていると、声を出していないはずなのに、すごく熱を感じる。
これを共鳴と呼ばずしてなんと呼ぼうかってくらいに。
そんな熱を感じるからこそ、子どもの頃から大好きなベースを、あの頃の無邪気な心のままで演奏出来てると思う。
だからもはや、この曲に関してはライナーノーツというか、ライブに来てくれたら一発で分かると思う。
上手いとか下手とか関係なく、キラキラした気持ちがどれだけ素晴らしいことか。
汗だくになりながら全力で「いいだろ!」って思いながら歌ってます。
そういう時の自分の姿は、誰になんと言われようが絶対に間違ってない。スーパーイケてる。アルバムに収録されて化けた曲「ホワイトライクミー」。
先行配信された時から録り直した音があるというのもあるけど、
穏やかな曲が続いたあとにくるこの曲は、より輝きを増しているように思う。
曲の構成もそうだけど、グッとこらえてから放たれる良さがあるなぁって実感した。
ベースラインは緊張と解放を意識して作った。
Aメロはバスドラムとしっかり合わせてタイトなリフレイン。
Bメロで伸びのあるフレーズで緊張を解して、サビで一気に解き放つ!
この流れがうまくいってて、めちゃくちゃ気に入っています。最後に「いつものこと」。
俺は昔から、日常の中のありふれた物が入っている歌詞が好きなんです。
この曲で言えば、”たばこ”とか”ギター”とかそういうの。
物には人それぞれの思い出があるから、自分の思い出と一緒に歌詞の世界に溶け込める感じがして。
自分の経験と重なる部分を感じるとそれが共感になって、
深く共感できた話っていうのはその人の支えになり得ると思うんです。なんだかどうしようもない日常を送っている時があって、
それを吐き出したいのに、言葉が見つからない。
そういう時に「いつものこと」を聴くと、自分のモヤモヤが言葉にされていて、
心の中が整理されて、気持ちがゆるやかに落ち着いてくる。
誰かと会わずとも、発散するために身体を動かさずとも、
4分2秒で、気持ちが落ち着いてくる。これって本当にすごいことだと思う。大はこの曲を自分の日記みたいなものだって言っていたけれど、
だからこそ誰しもに響く曲になった。人それぞれの「いつものこと」がある。
心から名曲だと思ってます。最後に、このアルバム『FRAGILE』は、総じてメロディーが強いアルバムになったと思う。
メロディーが強いっていうのは、ただ歌のラインが美しいっていうだけではなくて、
ギターやベースやドラム、ピアノも電子音も全部、それぞれの音が引き立たせあうことで初めて得られるもの。
だからこのアルバムは、メンバー全員でちゃんと形に出来た作品だと思ってる。
そして俺は歌詞を書いているわけでは決してないけど、
何かを決心して一歩踏み出すまではいかずとも、
俯いてしまった顔をちょっとあげてみるかって思ってもらえたら、
自分で責めすぎている心を少しでも気遣ってもらえたら、嬉しいです。
レコーディングでもライブでも、いつもそんなことを思いながら弾いてます。…ということで、俺の視点の『FRAGILE』を書いてみました。
とんでもなく長くなってしまった。ここまで読んでくれて本当にありがとう。
数年、数十年先でも聴きたいアルバムになりました!無事にリリース出来てよかった!
改めて、どうぞよろしく!
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New AL「FRAGILE」リンク:
https://A-Sketch-Inc.lnk.to/LAMP_IN_TERREN_FRAGILE
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2020.05.27
『Enchanté』RELEASE DAY SPECIAL 公開インタビュー / OTHER
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5/22 LAMP IN TERREN
『Enchanté』RELEASE DAY SPECIAL
公開インタビューコロナ禍の中、松本からいつものように歌が届いた。新しい音、新しい言葉がそこには鳴っていて、まるで別の星から降り注いだかのように、明らかな変貌の光をLAMP IN TERRENは放っていた。だからこそ、このタイミングでオンラインでの生配信インタヴューを敢行した。このテキストはそのインタヴューを、少し姿を変えてお届けするものである。ありのままの自分でいることの意義、「初めまして」の世界、オンラインで繋がる不可思議ーー「国民全員強制孤独状態」ともいえる世界の中で、常に孤独と共に生き抜いてきた松本大は、新曲"Enchanté"を通して、今僕らに必要な感覚と歌を贈ってくれた。諦観ではなく、あくまで未来を自らで描くために生きる意志を語ってくれた松本の声を聴いて欲しい。あなたの世界の見方が、ほんの少し明るくなるはずだ。なおインタヴューが進むにつれ、加速度的にお互いに口調が砕けてくるが、敢えてそのまま記載している。オンラインでありながらも限りなく飾らない心のやりとりを感じて欲しい。
俺はこの世界にいるっていうことを、誰よりも発信することが正しい気がしている
◾️オンラインでのインタヴューかつ生配信という特殊な形ですが、よろしく。まず、最初に少し振り返らせてください。昨年末からは年明けにかけて、ロックバンドとしての矜持を示すかのような荒々しさを見せたツアー『Blood』(2019年11月〜12月開催)、そしてワンマンライヴ『Bloom』(2020年1月13日マイナビBLITZ赤坂)の完遂、そして過去とは全く違うニュアンスで、自らのことを赤裸々に綴った"いつものこと"を含む『Maison Diary』のリリースなど、LAMP IN TERRENにとっては、かなりの変化が生まれた時間だったと思っていて。大(松本大/Vo.&Gt.&Pf.)にとってはどんな時間でしたか?
松本大「そうだな......今までは、過去を否定しながらずっとやってきた印象が自分にあって。そこを抜け出したのが、4th Album『The Naked Blues』というアルバムだったんです(2018年12月5日リリース)。否定し続けながらも、その当時までに培った経験を持って、灰の中から蘇る感覚で創った感覚で。でも去年の『Blood』は、やっとそういう過去の否定から抜け出して、ありのままで進んでいけるツアーだった。それが自分の中では驚きで、進んでいくのが楽しかった」
◾️自分を出すことを怖がらなくなったという点が一番大きいと思っていて。今までのテレンの歌は、あくまで大/テレンの歌だったんだよね。あまりにも強い世界観を一人称で歌うが故に、聴き手にとっては、自分のこととして楽曲を聴くことが中々難しかった。でも『Blood』を完走した先で発表した"いつものこと"という曲は、まるで自分の話のようにスッと聴こえる曲で。それは、自分自身を見せ続けたことで生まれたのかな。
「ーーどちらかと言えば、過去の自分はずっと夢見がちで。自分が「こうなりたい!」という願いや祈りの中を生きていたんですよね。それは、自分の生活の中にある小さなもの......本当に普通の、小っちゃな部屋で生まれた俺の感情なんて、誰にも共感してもらえないと思って生きてきたからで。それでも、少しずつ自分の内面をそのまま出すということをしてみたら、その方がむしろ共感をしてもらえて、受けて止めてもらえて、好きだと言ってもらえたーーそれが、嬉しかった。だから、"いつものこと"のような自分の内面を素直に出せる歌を創れるようになったんだと思う。その感覚は、今まで自分が創り上げてきた夢から覚める/壊れていくという感覚があったけど、それでも俺は自分が自分であるということを証明した上で、夢や希望的観測を語る方が自分の中で辻褄が合ったんです。年齢のせいもあるのかもしれないけど、ちゃんとリアルを提示した上でじゃないと、フィクションや夢物語は語れなくなった。今になって思うと、あり触れた小さなことを歌にする勇気が必要だったんだな、って思う。それをメンバー4人みんなで自覚できたから、ようやく夢の話でも自信を持って話せるようになったし、何より、今の自分たち自身のスタイルに確信があるんじゃないかと思いますね」
◾️"ほむらの果て"のように、俺は俺自身以外では生きられないと叫べる人間って、本当に極少数の声が大きな人にしかできないことだと思うんです。一方で"いつものこと"のように「情けないんだけど、これも自分なんだよね」みたいにポロッと本音を零している姿の方が人間らしく届く。いい意味で「松本大って人もこんなもんなんだな」って聴き手には伝わったと思うんです。その瞬間に、今まで開いていなかった聴き手の心の扉が開いたと思う。
「うん、そうなんだと思う」
◾️リリースタイミングは昨年末、つまり、現在のコロナ禍に対するリアクションではなかったにも関わらず、"いつものこと"という楽曲はサウンドとしては暖かな音像だけども、実は歌詞だけを読んでみると、とても寂しい日常の孤独を孕んだもので。今現在って、一種の全員強制孤独状態だと思うんだよね。
「(笑)。ーーそれで言うと、俺はずっとそんなもん。寂しさがずっと胸にあるし、そういう生き方をしてきてしまったから。きっと、ステージに立つ人間としての意識が大きく反映されている気がする。寂しさを抱えているのは自分だけじゃないって感じることができる一方で、自分はその感覚を発信する立場に有難いことにいて。だから、ただ頑張れって応援するよりも、俺はこの世界にいるっていうことを、誰よりも発信することが自分の心情としては正しい気がしていて。ロックスターにもなり切れない自分が、小さなことかもしれないけど自分の生活を歌うことに意味があるかなって思ってる」
◾️今誰しもが孤独を感じる中で、孤独を生きてきた大の歌はより今響く存在になっていると思う。孤独な日々に対して、悲観を持たないためにテレンの歌がより届けばいいなと思います。
「俺もそう願っています」
未来とも初めましてだけど、未来の貴方とも初めましてだなって
◾️そうやって自分自身を素直に表現できるようになった日々を経て、完成した楽曲が"Enchanté"だね。まずは、リリースおめでとうございます。
「ありがとうございます!まだ配信されて24時間経ってないね」
◾️新しくて懐かしい感覚を抱きながら、最初に音を聴きました。最近のテレンが追求していたリアルを晒すイメージというよりは、空想の世界をサウンドで描きつつも、そこにとても胸に落ちる言葉が載っているーーこのバランスが新しいな、という感覚があったんです。
「ちょっと初期の頃の自分の感覚が融合してる感覚があるんですよ。それは、さっきも話していた自分が否定してきた過去。それはきっと、自分のリアルを曝け出せるようになってきたからだと思っていて。元々、俺は音/音像で景色/絵を描くことが大好きで、そこに似合う言葉を選んで曲を創ってきた感覚があって。つまり、音が先で言葉がそのあと。だけど、歌として言葉があとになっているのはよくない、自分の中のリアルを出したいと言う気持ちもあるから、そのバランスにおいてスクラップ&ビルドを繰り返してたんだよね。ただ、いざ裸の言葉を出せるようになってみても、やっぱり俺は言葉でも絵を描きたいと思った。自分のリアルを混ぜつつ、自分の言葉の中で景色を見せたい。そのどちらもある感覚で"Enchanté"は創れたから、自分の中で1つきっかけになった曲だと思う。LAMP IN TERRENの楽曲全体として絵を描けたって思っていて、初期の頃に、自分が願っていた楽曲の姿を知識と技術で形作れるようになったな、と思う」
◾️昔、「"緑閃光"ってどうやってできたの?」って訊いたことがあったの覚えてる? その時、大は「いやできちゃったんだよ」って言ってたよね(笑)。
「うん、わかんねぇ!って(笑)」
◾️そうそう(笑)。その時とは明らかに違うってことだよね。
「そうそう。わかんないじゃなくて、ちゃんと理由を持って説明ができる。だから今の自分は、願いや夢を描いていた過去をもう否定していなくて。今まで歩んできた松本大という一人の人間として、自分にしか書けない曲になったなって思えてる。そこが気に入ってる(笑)」
◾️昔から大はジャケットやグッズの絵を描いたり、MVの監督を自らやったり、音楽以外の表現もチャレンジしてきていて。今回の"Enchanté"のYouTubeオフィシャルオーディオで使われている写真も、最近大が始めたカメラで撮ったものと聞いてます。
「ずっと、カメラはやってみたい気持ちはあったんだよね。ただ、如何せん自分が欲しかったフィルムカメラって手が届きづらくて。でも始めてみてから、自分の表現の手法を増やすきっかけになったなって思う」
◾️映像とも音とも言葉とも違う、静止画の写真を撮り始めたことで、自分の中で感覚に影響が出ているのかな。
「うん。これは自分の心理状態ともリンクしているとは思うんだけど、小さなことに目が向くようになった。だからこそ、カメラを撮るということを自意識の外で自然と選んだんだとは思う。日常の些細なことを切り取るって作業が、フィルムカメラには必要で。ただ適当に撮っていても、いい写真にはならないんだよね。自分の中でこういう写真、こういう景色に対してはこんなアプローチで撮りたいっていう発想で写真は撮っていくものだと思っているから、それは歌にも通じるものがあると思う。......一瞬を掴むっていうことを、凄く意識してるんだと思う。写真と音楽の間で反復しているイメージがありますね」
◾️写真っていうのは、その一枚の中に物語があると思うんです。大の言葉を借りれば、「小さなもの」がどのように配置されていて、どんな風に写っているかーーその世界や感覚は大きな風景を音で、小さな自分ごとを歌詞として描く、今の大の音楽のモードに相当リンクしているよね。
「うん、本当にそういうことだと思う」
◾️今話してくれたように、大の中で今新感覚で曲を書けている、と。そこに対して、"Enchanté"=「初めまして」というタイトルをつけたくなったということなのかな。
「タイトルに関しては本当に感覚だった(笑)。仮タイトルには"Spark"と"空に落ちる日"っていう2つがあったんだけど、どっちもしっくりこなくて。ーーこれは本当にカメラと同じ感覚で、ピントのボケと一緒なんだよね。自分の中での感覚で、"Enchanté"というタイトルの響きと「初めまして」という言葉の意味が、いい具合にボケてて、ちょうど良い具合にピントが合っていて伝わるものだった。悪い捉え方をすれば、響きで誤魔化しているって思われてしまうのかもしれないけど、俺としては美しいものを作りたいって意識がずっとある中で、そのバランスが一番美しいと思ったんだよね」
◾️この曲を聴いていて、「初めまして」ってこと自体を改めて考えさせられて。当然、「初対面」という意味の「初めまして」もあるけど、今感じているのは常に人は生まれ変わり続けていて、逢う度に「初めまして」を繰り返している、ということなんです。例えば、大が新しい楽曲を僕に送ってきてくれる度に、僕は生まれ変わった大と話しているように感じていて、「初めまして」の気持ちを凄く持つんですね。この楽曲は、その感覚を強く呼び起こしてきました。
「その意識は、俺もずっと強く自分の中にあるのね。目の前にいる人は以前逢った時から、いろんなことがあって、別人が目の前にいるって感覚。昔好きだった人に、逢う度に距離感を忘れるって言われたの。あ、確かに!って思ったんだけど、わかる?(笑)」
◾️うん(笑)。
「いや本当に、確かにね!って思ったんだよね。俺は、今までの自分の中の記憶で補正して貴方に逢っているけど、遭わない間にその人が知らない人になっていてもおかしくないなって思うの。だから今日、黒ちゃんとも顔を見ながらでは久しぶりに話しているけど、お互い逢ってない間に何があって、どんな変化があったかなんてわかんないよね。だから、未来とも初めましてだけど、未来の貴方とも初めましてだなって思う。その初めましてに対してのリスペクトや愛は忘れたくないなって気持ちがあるーーだから、自分の記憶の中で補正されていく大切な人はいるけど、その像に固執したくない。いつも、真っ新な気持ちで誰とでも逢いたい、と思う。......最近おじいちゃんみたいになってきて、同じ話をするようになったんだけど(笑)。
◾️ははは(笑)。
「多分、自分の考えていることを反芻しているってことでもあるんだけど、「それ、前も聞いたよ!」って言われることがある。そういう変化が自分の中である!」
◾️きっと自分より1ミリでも外で起きている出来事に対して、リスペクトを持っているからだよね。すべてに対して新鮮な気持ちで、初めましてを何度も繰り返しているから、自分にとって大切な話で何度も自己紹介をするんだろうね。
「そう、知って欲しいんだと思う。今の自分はこんな感じですってこと。自分の中にある大切な信念みたいなものでさえ、過ごしていく日常の中で変わっていくーー風化して、成長して、劣化していく。だから、毎回ちゃんと自分のことを話したいって思ってるんだと思う」
◾️その気持ちは、"Enchanté"に本当に色濃く出ていると思う。歌詞の中に<世界にときめいていたいよ>という一節があるよね。これは昔の松本大からは絶対に出てこない言葉ですよ。恥ずかしくて書けなかったでしょう?
「......はい、そうですね...(苦笑)」
◾️(笑)。それくらい、今大は外の世界/人に対して恋心にも似たリスペクトを持っているということだと思うんです。この歌は新たな世界に対して心の赴くまま行こう!という応援歌としても、はたまた、熱の高いラヴソングとも取れるよね。きっとそのどちらのニュアンスも、大の心のモード感なんだろうね。
「うん、そうだね。でも、正直<空に落ちたい>という歌詞は伝わらないかなって思ってて。ーーこういう場所で歌詞のことを話すのは、正直どうなんだろう?って気持ちもありつつなんだけど......想像して欲しい領域でもあるから」
◾️じゃあ少し勉強っぽく推測をしてみようか(笑)。例えば、<空>という単語を持つ楽曲で、きっとテレンの歴史で一番強い印象を持っているのは"ボイド"という楽曲だと思います。あの歌では、空は虚空ーー虚しさ、喪失の象徴として描かれているよね。
「俺の中ので空に対する認識は空っぽ、何もないっていう認識で、ボイドの時と変わってないんだよね。でも逆に言うと、何もない場所なのであれば、自分で描いていけるとも思うのよ。極端な話、自分が見たい世界を反映させることができるかもしれない。でも逆に言えば、未来には何もないと思ってる、空と一緒で。空っぽで、何もなくて、色もなくて、真っ白なところだと思うのね。だからね、未来には向かいたくて向かってるんじゃないと思う。ーー極端に言うと、死にたくないじゃん。けど、未来に行ったらいつか死ななきゃいけない。でも行かなくちゃいけないーーそう、背中を押されてしまうんだよ。その感じが、飛んでいるようで落ちているーー進まざるを得ない未来に対して前向きでいるために、空に落ちるという言葉を使っているーー伝わるかな。
◾️「前向きに何もない未来へ落ちる」と言うことだよね。さっきの話で言うと、常に「初めまして」で世界が進んでいくのであれば、そのことに無自覚で何も知らずに生きていくと、何も自分では選択ができずに未来に落ちていくと思う。ただ、大の言う「無の未来」で選択を迫られた時に、知らないという自らを自覚して知識や想いを積み重ねていれば、自ら選択ができる可能性が出てくる。だから、リスペクトを持って初めましてを繰り返すことができれば、決してネガティヴではない形で空に対して落ちていく、と言うことができるのかな、と個人的には感じてます。
「うんうん。端的なイメージだとスカイダイビングに近いかな。凄く気持ちがいいし、自然を感じられるけど、その実、落ちている。けど、そのジャンプは希望に溢れたものだったりもする」
このバンドの持っている世界は、もう俺一人じゃ成立できない
◾️その映像は凄くリアルに音に出ていると思う。空感ーー空間系のエフェクトと隙間のある音の組み立てが浮遊感のあるサウンドスケープになって、その効果を引き出しているよね。
「<今空に飛び込んでいく僕ら>の空に飛び込む感じは凄いよね。擬似体験ができて、本当に気持ちがいいなと思ってる。サウンドだけでも自分の表現したいことができているんだけど、それの功績は実は真ちゃん(大屋真太郎/Gt.)が大きくて。Aメロから1サビにいくときに、いきなり転調してコードとしては落ちるのよ。俺はこの表現手法は知らなくて、真ちゃんのおかげでサビで「落ちる」イメージが凄く出せたことで、より自分のイメージに近づいて。自分の中でも、この曲は過去と今の自分の感覚が融合した感覚はあったんだけど、バンドとしても、バンドでアレンジした"!って言い切れる曲だと思う。今ね、とにかくバンドが成長している、そこは推したい(笑)」
◾️"いつものこと "も、確か真ちゃんがコード付け直していたよね?
「そうそう!」
◾️個人的には、ラスサビの健仁(中原健仁/Ba,)と大喜(川口大喜/Dr.)の二人のダイナミズムの付け方は最高だったよ。
「健仁もそうだし、大喜も何回もビートを動画で送りつけてきて。それを繰り返していたよ」
◾️大が創るデモって、基本的にほとんどの音が入っている完成系のものじゃないですか。以前は割とデモで完成形が見えてたけど、最近はメンバーとアレンジを詰めた後、楽曲が相当姿を変える印象は確かにあります。
「それはあるね。ちゃんとメンバーで創っている感じがあって、逆に俺は凄く自由になった。各々の役割分担ができて、俺は俺の役割に集中できるようになった」
◾️それは、0から1を作る役割?
「そこもそうだし、全体の音像感とか歌詞の世界観とかも、かな。今は、メンバーからのリアクションがしっかりあるから、メンバーのお陰で自分だけじゃ見えなかったものがしっかり見えてくる。4人の中心点を目指せばいいから、自分一人よりも全然迷わないんだよね。そうやって曲の雰囲気ができてくると、自然と言葉も出てくるし」
◾️じゃあその成長速度だと、大はある意味、毎回知らないメンバーと「初めまして」をして一緒に曲を創っている感じだね。
「お前、そんなことできるようになったの!ってよくあるからね(笑)。ーーLAMP IN TERRENとしての音楽ができているなって思う。このバンドの持っている世界は、もう俺一人じゃ成立できない」
◾️この1曲を通して、大の中での表現のハマり所、そしてバンド自体の姿も見えてきたっていうのは、本当に大きいことだね。
「本当にそう。"いつものこと"の時から片鱗はあったけど、確信した。これはバンドっていう生命体だって思う。一体、この感覚でバンドをやれている人間ってどれだけいるのだろう?ーー自分で言うも変だけど、自分でやっていることが本当に特別だと思う。日常で言えば全然大したことはない暮らしなんだよ。自分がやっていることが特別だっていう感情は、人間誰しもが感じていいものだと思うんだけど、俺もまた俺で、今自分がやっていることが特別だって思えてる。俺らにはアレンジャーもプロデューサーもいないから、4人だけですべて完結していて。凄く気持ちいいよ、自分たちだけでやるって(笑)。もちろん、お互いに足りない部分を埋めるようにぶつかることはあるけど」
◾️去年のツアー『Blood』の初日(2019年11月1日下北沢CLUB251)に、予定にはないダブルアンコールとして未発表だった"いつものこと"を大が弾き語りで披露したじゃないですか。「新曲できたんで聴いてください」って(笑)。
「今日はやらなくていいんじゃない?ってなってたんだけど、俺がやりたくなっちゃったんだよね。だから本当に独りで、ステージに出て演奏を始めたんだけどーー」
◾️2コーラス目から、メンバーが徐々にステージに登場して大に合わせて演奏をし始めたんだよね。まるで、予定されていた演出だったかのように見えたかもしれないけど、あれは本当に予定していなかったこと。僕は、あの日に観た大を含めたメンバーの表情が凄く残っていて。互いへの愛情を心から感じた瞬間だった。あの辺りから、バンドという生命体としての力がこれまで以上に凄く宿っていたんだなって思います。
「......うん」
直接会っていたら俺には俺の姿は見えない
◾️少し話はそれたけど、大としてもバンドとしても生まれ変わった状態で、文字通り「初めまして」をするには納得のいくシングルができたんだと思います。そんなシングルの配信が決まっていてたのに関わらず、あなたは本当に急に新曲のデモを発表しました(笑)。
「"宇宙船六畳間号"、ね。俺が待ち切れなかったんだろうね(笑)」
◾️この曲はタイミングも含めて考えると、本当にふと書いた曲だったのかな?
「ーーもしかしたら、素直に話し過ぎると嫌われてしまうかもしれないんだけど......周りがね、この期間だからこそ色々なやり方でリスナーと一緒に音楽を創ったり、共有していこうとしていたんだけど、俺自身はそこに違和感があって。それで、こんな時だからできる曲があるのかもしれないなと思って、何も考えずに曲を創ってみようと思ったのね。それででき上がったものに対して「あ、これは荒削りのまま1回聴いてもらった方がいいかもしれない」と思った。歌詞を書いていく中で、自分の部屋を宇宙船のように感じていたっていう想いがまず最初にあって。今も正にそうだけど、こうやってパソコンを通して、外にも出られずにインターネットの窓から世界を見ている感覚ーーこれは誰もがそうだな、みんな同じだなって思った時に、あくまで自分独りで創ったものを聴いてもらいたいと思ったんだよね」
◾️大が思ってた通り、この曲はみんな同じ気持ちで聴いたと思う。みんなが部屋で、パソコンやスマホーー歌詞にある<小さく光る窓>を通して。そして、その繋がりだけが今は僕らの世界なわけだよね。そもそも、こうやってインタヴューをガッチリとオンラインでやる日が来るなんて思いもしなかった。ただ、今世界に感じている感覚っていうのは、この後訪れる新しい日常において、悪い意味ではなく、必ず引き摺るものだと思うんだよね。オンラインでしか人と繋がることができなかった時代/時期がありましたっていうことは、必ず残ってしまうことで。だからこそ、新しい日常が訪れてからまた大が新しい歌を歌っていくために、今この瞬間に抱いた感覚をそのまま歌にできたのは、とても大きいことだと思う。
「ーー俺はあんまり意識し過ぎない方がいいのかもしれないと思う。自分の日記をそのままアートに膨らましていく方が、自分の話ができる。こんな景色を創ろう、こんな夢を見よう、こういう希望の中に居ようーーそうやって考えるよりも、「今日はこんなことがあった」ってまずは書き留めてから、自分と会話しながら創るのがいいと思っていて。敢えて強い言葉で言うなら、世の中に対して歌うことには興味がなくて、あくまで、自然と世の中から影響を受けた自分が日記を書くだけ......そんな感覚で創っているかな。ーー俺がこじんまりとした人間だから、心の中にあることを歌ったら共感してもらえるのかな?って最近は思ってきた。きっとね、みんな普通なのよ。どんなスターだって、悪口言われたら傷がつくし、みんな小さな生活の中にいる。でも俺は、誰よりもスターのような存在でいることを放棄しているから、より小さなことを歌にできることが持ち味なんじゃないかって最近は思ってて。俺にしかできないことってなんだろうな?って考えていたけど、自分の小さいことを見つめて表現していくことだなって今は思いますね。
◾️今のバランス感覚で、大とメンバーみんなが創る歌を沢山聴きたいな、と思います。
「まぁ、明日どう思っているか、変わっているか、全然わからないけど......でも感覚的に今はこれが性に合っているんだなと思う。ーー次のアルバムはそうなっていくと思う」
◾️アルバムの話なんてしてもいいの?(苦笑)。
「まぁね、アルバムは出したいと言ったからね」
◾️じゃあアルバムの話が出たので、少し先の話をしますが、10月から始まるツアーを先日発表したよね。今、ツアーを発表するっていうことは、正直チャレンジングなことだと思うのね。
「うん、困惑している人もいるとは思う」
◾️この発表に関しては、メンバーとしての意思が強かったの?
「そうだよ。だって、目標がないのは辛い。できるかどうかはまだわからないよ? これからの世の中の動き、一人ひとりの努力......いろんなことが関わってくる。だけど何も先にないのは、生き甲斐がないし、ワクワクしない。目標を設定するのって凄く大切だなって思うんだよ。だからまだやれるかはわからないけど、何か一緒に頑張っていこうぜっていう目標を設定したかった」
◾️メンバー自身にとっても、聴いてくれる人にとっても糧になるということだよね。
「うん。第一ね、オンラインはこれから先の世の中でも普通にはなっていくと思うけど、やっぱりこれって不健全よ。直接逢わないのは不健全」
◾️どういうところで、大はその不健全さを特に感じてる?
「会話のテンション感もそうだし、タイミングだけでも感じてる。まずさ、そもそも心なんてものは見えないのよ。でもそれを自分の身振り手振りも含めて心の一つとするなら、それが見えない状態で会話しているのは不健全だなって思う。ーーしかも、このパソコンの画面には俺自身も写っているからね。自分で自分に話しかけている状態でもある。
◾️ーー確かに、それは本当にそうだね。
「そうでしょ? だって直接会っていたら俺には俺の姿は見えないんだから。俺は自分の身振り手振りを最大限使って会話をするけど、俺には俺のことが見えない。そうなればなるほど、心は裸の状態になっていくと思うんだよね。でも、こうやって自分の姿が見えていると、見栄を張っちゃう部分が正直ある」
◾️自分の存在って、そもそも他者にしか認識できないものだから、自分の姿が見えてしまうと恥ずかしいこともできないよね。そもそも大は、自分と他者/世界との関係性の中で歌を紡いできたと思うから、余計その感覚があるのかもしれないね。
「そう。ーーだから、ツアーの話に戻ると、健全な状態の目標は欲しかったし、共有したかったっていうのが一番大きい」
◾️うんうん......アルバムは期待してていいですか?
「鋭意制作中ですよ」
◾️俺はとにかくね、ツアーにちゃんとアルバムが間に合うかどうかを心配しているよ。これ冗談じゃないからな。
「......痛え(苦笑)。うん、締め切り守らないで有名だからな(笑)」
◾️いや本当に笑い事じゃない。
「いや本当にそうだね、頑張ります(笑)」
◾️待ってます。ツアーができる世界が訪れていれば、いろんな意味で世界も生まれ変わってると思う。バンドとしても完全に新しい世界で、皆さんと「初めまして」を果たせたらいいね。
「うん、本当に頑張ります。黒ちゃん、今日はありがとう。皆様"Enchanté"をよろしく!!」
interview&text 黒澤圭介
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2019.07.16
WHITE LIKE ME / 松本大
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最近書いている曲は「詞先」という手法で、歌詞から先に出来上がっていきます。まぁ、同時にメロディも生まれるのですが。書いていた手紙が"歌"になるのは楽しい。
ですが、この度配信シングルとしてリリースする『ホワイトライクミー』は「曲先」でした。7/28、日比谷野音のために何か新しい曲を!という経緯で作った曲だったからか、音のイメージの方が先に生まれた。昔から曲先で書くのが多く、メロディが決まったところに言葉を当てはめていく面白味もあったけれど、今思えばいつも苦労していた。僕にとって言葉がメロディを持って生まれてくる事はあっても、メロディが言葉を連れてくる事はあまりなかったから。
せっかくのワンマンライブ、せっかくのビッグイベントだから、「何かすごい事を伝えなきゃ」と思って書き始めた曲です。肩肘張っちゃって最初は何にも浮かばず、曲作りも進みませんでした。結果的には「伝えたい事なんか何にもないよ」という気持ちが土台としてあります。その上で自分がどうしたいか、何が好きかだけを考えた曲です。
この曲を書いて思い知りました。誰かに伝えなきゃいけないことなんて本当はひとつもないのかもしれない。あるのはただ自分が何が好きで、どんな風に生きていたくて、何が楽しくて、どんな世界であって欲しいのか。そんなことばかり。頑張る意味やら生きる理由やらを探して、そればかりでは身動きが取れなくなったり、最初から大層な事なんて言えもないし、背中も押せないし、救えもしない。全て結果論なんだろうなーと思う。だって、ちっぽけな自分の世界で巻き起こる事しか言葉にならないですもの。僕は僕が幸せになるために音楽を選んだ。その上で聴いてくれた誰かが楽しんでくれたり、救われたりするならもっと幸せだなぁとか思いながら。
だけど、誰かの背中を押すために書く歌って自分が現実に生きていない感じがするのです。自分の世界で見えていないものを歌にするのって薄っぺらいと思うのです。だから沢山の景色や作品や感情に出会わなければなーと今になって言語化できるようになった。
この歌の先に待ってくれている誰かがいるのに、その誰かを想ってばかりでは歌にできない歯痒さも不安もありました。だけどこの曲が完成してから「あぁ、これを伝えたいんだ」という気持ちに気付いた。伝わるかな。伝えなきゃいけない事はないけれど、ちっぽけな自分の世界で感じた事を閉じ込めた歌が完成すると、それを伝えたくなっちゃうの。そこで初めて「伝えたい」という気持ちが生まれるの。通り過ぎた後に意味や理由が生まれたの。
タイトルはパッと浮かんだものです。最初は自分のまっさらな部分がこの歌になったんだなーピッタリなんじゃないかなー良いタイトルなんじゃねー?とふわーっと思っていました。ホワイトは純潔でもあれば絶望の象徴でもある気がするし、美しいものを美しいと言えていた無知だった頃の自分を思い返しながら歌詞を書いていたし。
なんだけども、これ、花の名前なんだって。ホワイトライクミーって花があるんだって。花言葉を調べてみたら「感謝」だった。
どれだけ言葉を並べようと、たぶん100%伝えられないんだけども余白はやはり聴いてくれた人に埋めてもらおうと思います。最後はいつも頼りっぱなしで申し訳ないんだけども。野音のために書いた曲。伝えたいのは最初からこれだったのかもしれない。
いつもありがとう。
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2018.12.09
『The Naked Blues』セルフライナーノーツ 〜中原健仁編〜 / 中原健仁
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アルバムのセルフライナーノーツを書く。
「どんな曲ですか?」って訊かれれば返しやすいけど、
改まって書くとなるとなぜか、若干緊張してくる。なんだこれ。
こういうの文字にするのってなんか小っ恥ずかしい。
硬くなりすぎず、リラックスして書こう、そうしよう。多分、超絶長くなるから、落ち着いた暇な時にでも読んでみてね。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「I aroused」を聴くと、どこにいても一瞬でこのアルバムの雰囲気に飲み込まれる。
なんならまさに今、サイゼで一人、飲み込まれてる。
神聖さすら感じるピアノで始まったかと思えば「望まれなくていい」。
第三者的に聴くと「このボーカル大丈夫か」なんて思いながらも、
その先が気になって耳を澄ませている。
「あるがままで光る」というサビの歌詞がこのアルバムを象徴してると思う。
決意表明に思えて、気持ちが整う感じがする。
うん、やっぱり一曲目はこの曲だったんだな。
そのまま「New Clothes」へ。
この自然な繋がりがスタジオで出来た瞬間、
あまりの気持ち良さに何度も聴いた。病みつきになった。
最近は特に、この曲を演奏していると、
「この新しい声で、曝け出した自分自身で踏み出していく」
っていう大の覚悟を勝手に感じてしまって、
負けねえぞ、俺だって踏み出していくぜって思って高ぶる。
脳内イメージは、仲間と肩を並べて歩く〇〇レンジャーな感じ。
信頼しあって前に進んでいくぜって気分。
そして「オーバーフロー」で走り出す。
初めて歌詞をもらった時、なんとなく照れ隠しも含めて
「こんなに裸んぼになってしまって...」とか言ってしまったけど、
本当はそれがすごく嬉しかった。
「フルボリュームで叫ぶよ 君に愛されたい」。
あいつきっとこれ言うの恥ずかしいだろうな、
けど「The Naked Blues」の名の通り、
何も隠さずに伝えようとしてるんだな。
着飾らない真っ直ぐな言葉を放つ人に俺は憧れる。
その真っ直ぐさが最高に男らしくて、よりあいつが好きになった。
その上、コーラスパートまであるなんて...
至れり尽くせりかよ。アツさまでオーバーフローかよ。
思わず拳振り上げちゃう中原氏ですわ。最高。
ハンカチを用意する間も与えず「BABY STEP」。
どアタマのストリングスの時点で全俺が拍手喝采。
素晴らしいメロが続いて、最後は全員のコーラス。
本当にすべてが聴きどころだと思う。
けどこのサビメロは本当に大が頑張った。
スタジオで3人が囲んで大に歌わせまくった。
本当に色んなパターンで大が歌ってるにもかかわらず、
大屋「う〜ん...」
川口「もっといけるはず」
中原「もう一声!もう一声!」。
いじめか。こんな体育会系だったっけ俺ら。
めちゃくちゃ時間をかけて、その成果がちゃんと実ったと思う。
誰に聴かせても堂々と胸を張れる、まさしくLAMP IN TERRENの曲。
このアルバムはどれも歌詞が伝わりやすいと思うし、
何よりも、常に言葉と向き合っている大らしい。
「言葉にするには まだ程遠くて
想いばかりを募らせていく
行き着く先はいつも同じ
愛してるなんて 歯痒い言葉だけ」
感情っていうものを言葉で伝えることは本当に難しい。
ていうかもはや無謀とすら思える。
だけどこの「花と詩人」は、誰しもが持っているそんなモヤモヤを、
大が詩人として、しっかり言葉にしている。
これほど共感した歌詞はないかもしれない。
恋人だけじゃなくて、大切な人には絶対にこの曲を聴かせたい。
難しいレコーディングだったけど、純粋な想いを込められたと思う。
どの楽器もすごく良い音。
なんてしんみりしたところに「凡人ダグ」。
こういう流れが俺ららしくもあるし、強さでもある気がする。
個人的にこの曲は聞くとものすごく苦しくなる。
ダウナーになってる時にこれ聴いたらどうにかなりそうな。
でも、何かに期待して掘りまくった場所には何もなかったのに、
主人公の目が死んでない(俺の解釈では。)ところがすごく好き。
「そのうち見返してやるからな」。
ちなみにこの曲のベース、よく聴くとえぐいことやってるから
是非コピーしてみてほしい。弾けると病みつきになる。
ドゥードゥドゥドゥーデーデードゥードゥデドゥドゥデ!のとこ。
そして同じくコピーしてみてほしい曲上位の「亡霊と影」。
わかるよ。言いたいことわかる。だって俺が弾いてるんだから。
キモいよな。ベースがキモいよな。
けどこの、うねうねしたフレーズは結果的に、
「影」「揺らぐ視界」っていう歌詞によく合ってると思う。
ベースフレーズが言葉をより強くしてる。
スタジオで好き勝手なことをやって、それを大が整理して、
すごく気持ち良くなった。キモいけど。
何ヶ月か前、社会人1年目の後輩から連絡があった。
「まじでありがとうございます」
「なんだよ急に気持ちわりいな」
「俺、この1ヶ月、Dreamsのおかげで頑張れました」
上司からの理不尽なダメ出しに嫌気がさしていた時、
「Dreams」が支えになってくれたらしい。
正直、これほどシンプルな楽曲が響くのだろうかって不安があった。
だけど、その真っ直ぐさがより力になったと。
色んな人の意見を聞くたびに好きになる曲。
俺自身、アルバム製作中にこの曲に支えられた。
「叶わない夢だと知って
僕らは嵐に飛び込んでいく
今も輝いて 心を呼ぶ光の方へ」
歌詞に注目してほしいアルバムだけど、
特に「Beautiful」はサウンドにも注目してほしい。
音の最終チェックをしている時に、一番驚いたのがこの曲。
大がずっと「この曲は雷だ」と言っていて、
俺もそれを表現出来るように、メリハリを意識してフレーズを弾いた。
けど、ここまで雷になったのは、大の構築力とエンジニアさんの力が大きい。
雷の音をそのまま録音したんじゃないかってくらいの音。
2サビ後のゴロゴロ感、サビ頭の落雷感。
ミュージカルみたいな展開をする曲。
是非、良いスピーカーで大音量で体感してほしい。
「おまじない」のデモを聴いた瞬間、
最後のサビの転調が幸福感に溢れていて、
兄貴の結婚式が頭をよぎった。
アルバム発売前に兄貴がうちに泊まりにきた時、
何も言わずにしれーっと流したら、すごく気に入ってくれていて、
少しだけ運命じみたものを感じた。これが兄弟ってものなのか。
この曲の歌詞がとんでもなく好きで、
自分がこれを誰かに話している妄想をすると
うっかり泣きそうになる。我ながら引くわ。
「優しさなんて本当は 自分以外の誰のためでもない
時には嘘にもなる でも僕は君に使う ほんの少しぼくのため
君に笑ってもらうための おまじないを使える 」
こんなこと言ってみてええ!!!さ、寂しいいい!!!
「寂しさはきっと愛しいもの 繰り返しながら埋めていくよ」
やさしいかよ!!!イケメンめ!!!
「Water Lily」のこの歌詞が送られてくるまで、
俺にとって寂しい気持ちっていうのは
ただ取り払いたいものでしかなかったけど、
こんな考え方もあるんだなって気付かされた。
この曲はアルバムに入ってからより輝きを増した気がする。
バラードというよりは、自然に体が揺れるミドルチューン。
バンドとして新しいサウンドに挑戦した曲でもあって、
ライブと音源で違った味が出てると思う。
人肌を感じるような演奏を心がけてる曲。
あと真ちゃんのギターソロ必聴。再生するたびに楽しみなポイント。
最後は「月のこどもたち」。
この曲は、LAMP IN TERREN自身であり、
その音楽を聴いてくれる人たちの歌だと思う。
一人一人が持つ小さな光でお互いを照らし合えば、
大きな光を放てるんじゃないかという。
だから、「I aroused」で始まって、
この曲で終わることにすごく納得がいく。
大事なことがたくさん詰まった曲。
これからも傍で照らし合えたらいいな。〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あとがき
中学生の頃、GRAPEVINEの「イデアの水槽」というアルバムに出会った。いきなりなんの話じゃいって感じだけどまあ聞いて。
一曲目の「豚の皿」という曲は、ぶっちゃけ、中学生の俺からすると
夜道に流れてきたら小走りで帰りたくなるほどダークだった。一曲目なのに。
だけど衝撃的だった。
俺がずっと聴いていた音楽は、こんな始まり方は絶対にしなかった。
だから本当によく聴いた。全曲めっちゃ聴いた。
それなのに今聴いても、やっぱり同じように衝撃を受ける。
多分、これからもずっとそう。何が言いたいかっていうとつまり、
このいつまでも色褪せない"新鮮な衝撃"が、
このアルバムにもあると思った。今回改めて聴いてみて、
初めて良いと思えたところはやっぱり今でも鮮度バツグンに良かった。
それだけじゃなくて、新しい発見もあった。
色褪せるどころか、聴くたびに鮮やかになっていくなんて。胸を張って言える。これは自信作だ。
いつまでもこのアルバムを聴いてほしい。
何かでつまづいてしまった時、踏み出す勇気が出ない時、
きっと、背中を押してくれるはず。うん。よし。それじゃ!
最後まで読んでくれてほんと、ありがとう。「The Naked Blues」、自由に楽しんでね!
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2018.12.08
俺のThe Naked Blues(セルフライナーノーツ 〜川口大喜編〜) / 川口大喜
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松本の一番近くにいるメンバーによる『The Naked Blues』セルフライナーノーツを順次アップしています。
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「俺のThe Naked Blues」
こんちゃっっ。
どう考えてもドラムの川口です。
こっちのブログは久々ですねっ。
なんかこっちはビシっとしますね。
なんか緊張するぜっ。
ってことで、
我々、12/5に4th ALBUM「The Naked Blues」をリリースいたしました。
皆んな聴いてくれましたでしょうか?
今回はそのアルバムについて、俺が思うThe Naked Bluesについて書いていこうかと思いまして。まあセルフライナー的な?
俺はメンバーだけど、歌を聴く時は
皆んなと同じ目線です。
なのであくまでも個人的な感想です。
まあ俺のThe Naked Bluesです。
改めてじっくり聴きながら
曲ごとに書いてみました。
長くなるとは思いますが、
暇つぶしにでもみてやってくださいっ。っしゃいってみよう。
1. I aroused
「私でいるために」
自分でいるために、自分にしかない輝きを失わないために。
俺は悩む、本当の自分ってのは、なるものなのか、戻るものなのか。
いくら悩んでも答えは出ず、
と言うか、出す気がないことに気づく。
しかしそんなことを悩んでる「今」の自分に本来の自分らしさを感じることがある。
瞬間ごとに何を強く感じ、何を強く信じ、何を強く愛しているのか。過去でもなく未来でもなく、今というその瞬間の中でこそ自分の輝きははなたれてるもんやと思います。
別に考える必要はない。今感じたそれを感じまくればいい。したらもう光ってるかもよ。輝いてっかもよ。
2. New Clothes「どんな姿で」
自分が信じたものを、自分が胸をはれるものを、どんな姿でやりたいのか。
どんな姿で人に認めてもらいたいのか。
その俺は自分じゃない、そんな自分を好きにならないでくれ。
知らず知らずに自分にハッタリかまして、そうやってできた鎧をまとったもう1人の自分。そんな自分との闘い。裸と鎧の闘い。俺と俺の話。
3. オーバーフロー「愛されたい」
誰もが心の中にもつ願望だと思う。
俺も強く願う。ふと思う、人に愛されたいと願うならば、一体何をすれば良いのか。
愛されたい人達に、何を伝えたらいいのか。
言いたいことはたくさんある。その中から何を選びどの言葉を伝えればいいのか。
この溢れそうな想いにどの言葉が一番合っているのか。
心と言葉。その瞬間の、その時のありのままな自分、鮮度抜群な強い想いはそんなに難しい言葉ではないと思う。考えなくていい。とんでもなく最強な言葉がすでにあるはず。4. BABY STEP
「偉大な一歩」
たくさんの想いやたくさんの言葉が飛び交う世の中。自由に生きれるが故の不自由な人生。何かと比べて埋もれそうになる日々。生き埋めにされる前に這い出なきゃいけない。つまりは諦めちゃいけない。何を?自分を。
今までで得た幸せや喜び、自分のもつ輝きはそれまでの小さな一歩が生み出してくれた財産なわけで。そうやって自分と生きてきたんだろうよ。立ち止まることは踏み出せることの証明。踏み出したその小さな一歩は世界を変えるための一歩。でっけえんやぞ!笑5. 花と詩人
「愛と言葉」
想いが深ければ深いほど、言葉では足りなくなってしまう。愛の語り方とは。
そもそも語るとはどういうことか。自分の言葉だけの話ではない。愛を語るということは愛する人がいるからであり、愛する自分がいるからであって、1人で語ることではないのかも。と言うか語れないのかも。伝えることはいくらでもできる。でも感じること、感じさせることは、互いの色や形を語りあわなければ分からないことなのかも。その先にある愛ある言葉、手を取り合って掴んだ愛ある言葉はとても強いものだと思う。1人ではその言葉に辿りつけねーんじゃね?なんて。6. 凡人ダグ
「何もない」
これに関して俺は一つ思うことがある。
「無」こそ「最強」なのではないか。と。
可能性しかない。ゼロのもつ可能性は偉大だ。何もないことに対してマイナスな感情が働くのはまあわかる。けど、無いということはきっとどこかに何かがある、と信じてるから無いと思うのであって、それを信じて探し続けることに俺はとてつもなく価値を感じる。必死ですよ。必死。自分を見失わないために何かを探す。無くても探す。そういう時の人間は強いと思う。何か見つかったら最強になってると思う。
7. 亡霊と影「美しい日々」
ある意味出会いと別れ。そして覚悟とけじめ。そんな曲なのかと。
失って気づく美しさ。失うからこそ輝きをもつ美しさ。共に歩んだ自分の一部を失う恐怖。目の前にはまた新たな闇。
しかしながら、おそらく、その闇を照らせる輝きとはそんな美しい過去達だと思う。
今その時に輝くものが全てではない。
願えば願うほど、信じれば信じるほど、そんな美しさは光力をもって今の自分を照らしてくれると思う。
8. Dreams「不確かなままいこうぜ」
不確かだからこそ求める。不確かだからこそ輝ける。夢を追うってのは不確かから始まってんじゃねーの?と俺は思う。
知りたいから、未知だから、もう夢を追うってのは宇宙に飛び立つみたいなもんだと思う。信じたもの勝ち。まだみぬ己の栄光を掴もうってんだから、その夢は自分にしか叶えられないわけで。いや、叶えられることすら不確かなんだが、こればっかりは、やるしかねえ。笑 つーか自分にしかできないことの一つだわな。自分の中にある不確かなものは人生を謳歌する上でとてつもなく重要な要素。自分の不確かに対してありがとうとすら思う。
9. Beautiful「一瞬と一生」
長いようで短い人生。短いようで長い人生。
んー難しい。結局、一瞬の積み重ねが人生なわけで、それは人によって感じ方が違うのだろうけど、一生の中でどれだけ一瞬を感じれるか。その一瞬の中でどれだけ生きることができるのか。目の前にある今を全力で生き抜く、そんな生き方できれば1日も一年も一瞬なんだろうな。儚くも切ないその一瞬だけど、それはとても美しいもので、綺麗で、何よりも輝きを放つ、けどそれは容易く触れることのできない、まるで雷のようなもの。命がけの一瞬、そんな一生に憧れてしまう。
10. おまじない「言葉にしよう」
願いを叶えるための自分だけに使えるおまじない。自分にしか口にすることのできない言葉。認めること、受け入れること、それは嘘偽りのない数少ない言葉に繋がる。言霊みたいなもんだ。そんな数少ない自分の言葉は、自分だけでなく、時に人を救うことだってある。口じゃ説明できないこの世のファンタジー。大切な人に、大切な時に、大切に贈る、そんな言葉をもてたらいいなと、思った曲。
11. Water Lily
「孤独は君がくれたもの」
何を隠そう俺は孤独を愛する寂しがり屋なのである笑 ってことはどうでもいいか。笑
まあ思うに、孤独ってのはそんな悪いもんじゃないと思う。孤独を感じる時ってどんな時?人それぞれ感じ方は違うけど、俺は寂しい時に感じる。じゃあさ、寂しさって、何で寂しいって感じるんやろね?俺はこうだ、寂しいと思わせてくれる大切な人がいるからである。つまりそれは俺にとって自分と同じくらい愛おしい存在。自分に命を感じさせてくれる存在。それを感じるから、知ってるから、寂しさがあって、孤独を感じることができる。だから、なんっつーか、孤独ってのはひとりじゃねー証なんじゃね?ってことを言いたいのである。イェア☆
12. 月のこどもたち「君と知る全てが光なんだ」
長々と書いてきたけど、この曲に関しては、この「君と知る全てが光なんだ」という一説に強い気持ちが込まれてると思っております。少なくとも、俺はこの一説で正直説明は終われる。つーか、このアルバムはこの言葉がうまくまとめてくれたなと思っております。辿りついたなってゆうか。
はい、長くなりましたが、
俺はこのアルバムを
改めて、この世の微かな光になるまでのアルバムだと思っております。何回でもスタートにたちます。
このアルバムをつくりちったあ強くなれた
そう思っております。
我々の自信作、胸張れるこのアルバム
「The Naked Blues」を是非ともよろしくお願います。最後まで読んでくださった皆さん、
マジでありがとう。これからもよろしく。
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2018.12.08
『The Naked Blues』セルフライナーノーツ 〜大屋真太郎編〜 / 大屋真太郎
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松本の一番近くにいるメンバーによるセルフライナーノーツを順次アップしていきます。
「セルフライナーノーツ〜大屋真太郎編〜」
曲について自由に書いてみました。これは解説とかではなく、一人のリスナーとして書いたことと、その曲のギターなどについて少し書いてみました。長いですがもし興味あったら読んでみてください。
1 . I aroused
初めて大からデモを聴いたとき、サビで一気に雰囲気が一変しつつ世界を崩さないコードとメロディだったので最もビビった曲。暗い洞窟から夜空へ飛んでいくんじゃなかろうかという、開放感というには少し物足りない感覚になったのを覚えています。自分自身というものはいかに流れやすく実態のないもので、今にも消えそうな揺らでいる灯りのようだけれども、だからこそ強く信じて向き合わなければいけない、そんな風に僕は思います。アルバム全体を包む、始まりにふさわしい曲になってうれしいです。漂うダークヒーロー感。2 . New Clothes
「恥をかく」のを好きな人はいないと思いますが、それがありとあらゆる何よりも許せない、という人は少なくないんじゃないかなぁと思います。恥をかいたって、かっこわるくたって、逃げずに信念を突き通すというのは難しいけど、とても大事なことなんだと聴くたびに思います。持つものが多くなればなるほどだんだん動けなくなってしまう。まずは手放してから新しいものを手にしたいものですネ。ギターに関してはぶっちぎりでエモーショナルになったので、ギターのメインテーマの時はロケットになった気持ちで弾いています。3 . オーバーフロー
この曲は楽器が録り終わってから大が歌詞を書き上げたのだけど、スタジオの階段でスマホの画面を見ながらモゾモゾしたのを覚えています(どうしようもなくて好きな子に告白なんてしたことあるんですけど、その時の気持ちが蘇ってきてしまって)。あまり恋愛の歌だと限定はしたくないけど、溢れかえる気持ちを伝えるのに結局有り触れた言葉になってしまうもどかしさ・不器用さをストレートに曲にできたことが嬉しいです。ギターフレーズをずっと考え続けていた時、変に凝ったギターを乗っけたくなくて、結局コードをひたすらかき鳴らすことにしたのは本当に最高の決断だったと思います。ギタリストとしてはなんか入れたくなるんですけど、あえて弾かない、というか叫ぶ!みたいな感じです。4 . BABY STEP
ES-335(※ギブソンのギター)が炸裂した曲です。リード、バッキングともに335×VOX(※アンプ)のコンビで録りました。プンプン香るほど土臭い音になったのでとても気に入っております。いい音、というより土臭い。この曲は、自分たちを見つめ直して作った曲であるので、大の声の良さが最も生きる音域とメロディで、大喜のダイナミックなドラムで、健仁の真っ直ぐなベースで、俺の良さは知らんけど、まあいいところを余すところなく上手く使った一曲になったと思います。僕らの世界は自分の五感を通して感じたものであるので、そこに実際に世界があるわけではないけど、一つハッキリしていることと言えば、ただこの瞬間を感じていること、それだけのはずだと思います。5 . 花と詩人
少ない音数にすることでより音の広がりを強調することができた曲。足していきたくなる気持ちを抑えて、余計に飾ることなく、それでも華やかで、曲のラストにかけて段々とドラマチックに展開するところがとてもグッときます。この曲を制作していた当時を振り返ると、LAMP IN TERRENにとってこの素直な曲はとても大きな意味を持つことになりました。「愛」という言葉に向き合うということはとても簡単ではなく、曲にすることで言葉以上のもの、あるいは言葉とは違ったなにか(愛なのかなんなのか)を伝えれるのではないかと感じることができた曲です。6 . 凡人ダグ
「ブルース」はwikipedia先生で調べてみると、【「ブルース」とは、孤独感や悲しみを表現する独唱歌であり、悲しみや孤独の感情は、英語ではしばしば「ブルー(blue)」の色でたとえられることに由来している】と出てきますが、まさにこの曲はブルースだな、と毎度思います。無情感に囚われた主人公ダグさんのブルースです。繰り返すギターフレーズがゴツンゴツンと硬い土を掘るようでお気に入りです。ギターソロに関しては、間奏に入る瞬間の大の叫びの勢いを殺さずに、僕なりに叫んでみました。7 . 亡霊と影
過去はどうにも美しく見えてしまうようで、亡霊みたいについてくるのでなかなか振り払うのが大変ですが、そうしようとすればするほど離れないらしく、厄介なものですね。疲れます。この曲は珍しくレスポールで録りました。いい感じにハードな音になったと思います。ちなみにデモの状態から大幅に別曲へ变化した曲の一つです。8 . Dreams
選択を迫られる時、楽な道と苦しい道があると思いますが、困ったことに茨の道のほうへ行くべきだと心の底で叫んでいることは多いと思います。それに目を瞑って楽な道を選ぶか、嵐に飛び込んでいくか。でも、いや、飛び込むべきです!突っ張ることが勲章になることもあるみたいですし、全力で応援したいと思います。ファズっぽいギターの音色が嵐のようで気に入っております。9 . Beautiful
永遠であることより、一瞬のことを美しいと思ってしまうのは何故なんだろうと考えていたことがあり、一瞬のものは儚く、恐怖と歓喜、その他諸々の相反する感情が入り混じっているからなのではないだろうか、などと考えていたところ、大がこの曲を持ってきたので個人的テンションアゲの曲でした。音楽で、そういった答えの存在しないようなことを精一杯表現できたことが嬉しかったです。雷みたいなギターの音(個人的見解です)になりました。静と動、音空間をじっくり楽しんでほしい一曲です。10 . おまじない
バンドサウンドから一歩引いた、いわゆる打ち込みのサウンドですが、ある意味挑戦の一曲になったなぁと思います。「優しさなんて本当は自分以外の誰のためでもない」自己中心的であること。その大切さを改めて実感する曲です。自己中心的だなんていうとマイナスなイメージを持たれると思いますが、僕は守るべきものであると思います。見返りなんて期待しない、求めない果汁100%の優しさ。祈りにも似た、こちら側が勝手に使うおまじない。11 . Water Lily
大切な人がいるからこそ感じる寂しさ、孤独感。それはよく他の色んな作品の中で「失って初めて気づく大切さ」なんて言い方をされますが、そういう言い方するとちょっと冷たいなぁ、なんだかなぁと思っていてモヤモヤしていましたが、その点この曲が言っているのはもしかして「お互いがお互いに歩み寄ろうとすること」なのではないかと思ってからとても腑に落ちました。お互いの心の距離を決めるのはそういうことだとも思うし、孤独感なんていうものは遠ざけるべきマイナスの要素というよりかは大切にしまっておくか、テーブルの上にでも飾っていればいいんじゃないかなとも思いました。ギターは人間的というよりかは、なんというか理論的というか自然の法則的にといいますか、そんな感じです。程よい透明感と微かな温かみをもたせたサウンドになったと思います。12 . 月のこどもたち
「月」という言葉通り、重力を1/6にしたようなギターにできたと思っております。人は一人では生きていけないなんて、ひどく有り触れた言葉かもしれませんが(一言で纏めるのは乱暴ですが)、僕は特に、頭で分かっているつもりでも何度も忘れてしまうことで、余裕が無くなると特に顕著で、こうして曲にして残すことができて嬉しいです。LAMP IN TERRENが以前より何度も伝えてきたことの一つに、「聴いてくれているあなたがいてはじめて音楽というものになる」というものがありますが、大きな内の部分だとしても、まさにその言葉を、ある一曲として、音楽として表現できたのではないかなと思っております。
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2018.04.12
弾丸ソロ動物園 / 中原健仁
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先日、長崎LIVE SHUFFLEと感エロツアーの間の数日間だけ、
長崎の祖父母の家に帰りました。初日の昼間は色々な収録や生放送があったのですが、
FM長崎「spicy voxx」に出演したとき、
なんと"お天気お兄さん"をやらせて頂きました。念願のお天気お兄さん。
しかし、公開生放送という緊張感に加え、
目の前にはDJマークさん&たかじゅんさんというスーパープロ。
隣からは姿を見ずとも伝わる「噛めばいいのに」という念。
高鳴る鼓動。震える指先。渇く喉。あとついでに花粉症。
とても冷静とは言えない状態のまま、スタートしました。昨日、FM長崎「Spicy voxx」内でお天気お兄さんやらせて頂きました。なんとか噛まなかったけど、よくよく聴いたら「で↑しょう↓」で緊張が出まくってる。 pic.twitter.com/kg0O9JBDCX
— 中原健仁(けんと) (@123mgr) 2018年3月20日
か、噛まなかった...。流れ的には噛んだ方が面白かったかもしれませんが、
そういう時ばっかりクリアしてしまうのが中原クオリティ。DJマークさんが読みやすいように作ってくれた原稿のおかげで、
なんとかやり切りました。圧倒的感謝です。
一日中、この生放送に緊張して過ごしていたので、
ようやくホッと出来ました。
夜は祖母が営む焼き鳥屋さんへ行き、
店のお客さんや祖母とお酒を飲み、楽しくその日を終われました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
翌日。
松本先生以外は一日オフでした。(先生は福岡で単独お仕事)後日聞いた話ですが、
真ちゃんは実家でまったりと過ごし、
大喜はなぜかマグネットを作っていたらしいです。
そして俺は人生初のソロ動物園をキメました。
急だったのでもう一度言います。中原健仁25歳、ひとりで動物園に行きました。
理由はいたってシンプルです。
祖父母の家で「砂漠の生き物展」というCMを観たから。
リクガメかわいいから。フトアゴヒゲトカゲ見たいから。
あとペンギン好きだから。つまり、思いつきです。
しかし、俺は肝心なことを忘れていました。前日のラジオ生放送を振り返ってみましょう。
しっかりばっちりはっきりと俺は言いました。
「明日は各地、くもり時々雨でしょう。」
「雨の降る確率、明日午後は50%〜60%でしょう。」
さすがです。
恐れ入りました。
ええ、馬鹿なんです。
それでも奇跡を信じるのが中原クオリティ。
バスの中で念じ続けました。まじ健気。うん、雨!あと風すっごい!
しかも乗り継ぎに失敗して、閉園1時間前に着きました。
ですが、せっかく来たんです。気を取り直していきましょう。
フラミンゴです。鮮やかですね。
しかし雨です。
同居中の馬です。いいですね。
僕はひとりです。
俺の推し動物、ペンギンです。かわいい。
けど、あの、速すぎませんか。
そしてフトアゴヒゲトカゲ。
こいつにはかなり癒されました。
ほぼ動かないけど、ドラゴンみたいでカッコいい。この場所は雨風をしのげて最高でした。
他にもカメやサソリなんかもいて、
ほとんど時間ない中で、一番長く見てました。
俺は爬虫類が好きらしいです。最後はキリンです。
雨風すごすぎて撮影どころじゃなかったけど、
思ったよりでかくて感動しました。
あとめっちゃ走りまくっててびびった。〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
前半は雨風のすごさとひとりぼっちさに切ない感MAXでしたが、
意外と動物たちが活発で楽しめました。
動画もたくさん撮りましたが
俺がカメラを回すたびに園内中央の猿が叫びまくってて、
とても上げられるものじゃなかったです。
あいつら元気すぎ。今度はちゃんと天気予報見てから行きます。ちゃんと。
あと開園と同時に入って、ゆっくり見て周りたい。また長崎帰ったときに、時間あったら行こうと思います。
寂しいから今度は友達か家族かメンバーを連れて。それではまた!
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2018.03.19
箱 / 松本大
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僕の"言葉"の定義について。おおむかしに話したことがあるかもしれません。『pellucid』という曲について、ついでに話したことがある気がします。
僕の心から生まれた想いは、思考を通って文字や声にするときに言葉になって、その言葉はあなたの思考を通って、心に想いが届いているという個人的な定義です。
これは、僕の中で『プレゼントを箱に入れて送る感覚』にとても近いです。けれどこの世は摩訶不思議。僕が送ったプレゼントは、相手に届いたときには中身が変わってしまうのです。「歌詞のここがとても響きました!!」なんて言ってもらえることもあって、「へぇそんなのでも嬉しかったりするんだー」とか「そんな解釈もあるのかー」と思ったりしています。たまに全然届いてないときもあります。傷付けてしまうときもあります。「あけたら空っぽでした」なんてこともあります。それが愛おしかったり、歯痒かったり、驚いたり、痛かったり、日々とても忙しない。心が違うから仕方ないで済ませることもできるけど、そうすると会話する意味がなくなってしまいそうで、それはあんまり考えないようにしてます。
送り主と受取り主の関係性で届き方はまた変わってくると思います。僕のことを知っているから、理解しようとしてくれるから届く想いもあると思います。思いも寄らぬものが届いているときがあります。
わざと空っぽにしているときがあります。あるときは重ねてほしくて、あるときは楽しくて、あるときは叫びたくて、あるときは逃げたくて。
言葉に隠しているときもあります。自分の想いを独り占めしたかったり、怖かったり、また楽しかったり。
色々考えた結果、結局答えなんてものはないと思っています。届けたい想いと受け取った想いが違っても、間違いなんてことにはならない。
『pellucid』は、体や思考が邪魔だと思って書いていました。浮かんできた想いのまま届けばいいのにと思って書いていました。未だにそれは変わりません。本音はね。
結局なにが言いたいかというと言葉はとてつもなくめんどくさいということです。けど、こうしてまた想いを言葉に詰めるのは、「誰かと生きていたい」と心が言うからだと思います。
生きるのも孤独なのも伝わんないのも正直全部めんどくせぇと思う日もあれば、全部おもろいと思う日もある。とりあえず今は、箱に入れたプレゼントが摩訶不思議アドベンチャーを越えても変わらないまま届いたらどうなるんだろうという興味がある。最近そんな感じ。結局めんどくさい話になってしまいました。おやすみ。