『The Naked Blues』セルフライナーノーツ 〜大屋真太郎編〜 / 大屋真太郎
松本の一番近くにいるメンバーによるセルフライナーノーツを順次アップしていきます。
「セルフライナーノーツ〜大屋真太郎編〜」
曲について自由に書いてみました。これは解説とかではなく、一人のリスナーとして書いたことと、その曲のギターなどについて少し書いてみました。長いですがもし興味あったら読んでみてください。
1 . I aroused
初めて大からデモを聴いたとき、サビで一気に雰囲気が一変しつつ世界を崩さないコードとメロディだったので最もビビった曲。暗い洞窟から夜空へ飛んでいくんじゃなかろうかという、開放感というには少し物足りない感覚になったのを覚えています。自分自身というものはいかに流れやすく実態のないもので、今にも消えそうな揺らでいる灯りのようだけれども、だからこそ強く信じて向き合わなければいけない、そんな風に僕は思います。アルバム全体を包む、始まりにふさわしい曲になってうれしいです。漂うダークヒーロー感。
2 . New Clothes
「恥をかく」のを好きな人はいないと思いますが、それがありとあらゆる何よりも許せない、という人は少なくないんじゃないかなぁと思います。恥をかいたって、かっこわるくたって、逃げずに信念を突き通すというのは難しいけど、とても大事なことなんだと聴くたびに思います。持つものが多くなればなるほどだんだん動けなくなってしまう。まずは手放してから新しいものを手にしたいものですネ。ギターに関してはぶっちぎりでエモーショナルになったので、ギターのメインテーマの時はロケットになった気持ちで弾いています。
3 . オーバーフロー
この曲は楽器が録り終わってから大が歌詞を書き上げたのだけど、スタジオの階段でスマホの画面を見ながらモゾモゾしたのを覚えています(どうしようもなくて好きな子に告白なんてしたことあるんですけど、その時の気持ちが蘇ってきてしまって)。あまり恋愛の歌だと限定はしたくないけど、溢れかえる気持ちを伝えるのに結局有り触れた言葉になってしまうもどかしさ・不器用さをストレートに曲にできたことが嬉しいです。ギターフレーズをずっと考え続けていた時、変に凝ったギターを乗っけたくなくて、結局コードをひたすらかき鳴らすことにしたのは本当に最高の決断だったと思います。ギタリストとしてはなんか入れたくなるんですけど、あえて弾かない、というか叫ぶ!みたいな感じです。
4 . BABY STEP
ES-335(※ギブソンのギター)が炸裂した曲です。リード、バッキングともに335×VOX(※アンプ)のコンビで録りました。プンプン香るほど土臭い音になったのでとても気に入っております。いい音、というより土臭い。この曲は、自分たちを見つめ直して作った曲であるので、大の声の良さが最も生きる音域とメロディで、大喜のダイナミックなドラムで、健仁の真っ直ぐなベースで、俺の良さは知らんけど、まあいいところを余すところなく上手く使った一曲になったと思います。僕らの世界は自分の五感を通して感じたものであるので、そこに実際に世界があるわけではないけど、一つハッキリしていることと言えば、ただこの瞬間を感じていること、それだけのはずだと思います。
5 . 花と詩人
少ない音数にすることでより音の広がりを強調することができた曲。足していきたくなる気持ちを抑えて、余計に飾ることなく、それでも華やかで、曲のラストにかけて段々とドラマチックに展開するところがとてもグッときます。この曲を制作していた当時を振り返ると、LAMP IN TERRENにとってこの素直な曲はとても大きな意味を持つことになりました。「愛」という言葉に向き合うということはとても簡単ではなく、曲にすることで言葉以上のもの、あるいは言葉とは違ったなにか(愛なのかなんなのか)を伝えれるのではないかと感じることができた曲です。
6 . 凡人ダグ
「ブルース」はwikipedia先生で調べてみると、【「ブルース」とは、孤独感や悲しみを表現する独唱歌であり、悲しみや孤独の感情は、英語ではしばしば「ブルー(blue)」の色でたとえられることに由来している】と出てきますが、まさにこの曲はブルースだな、と毎度思います。無情感に囚われた主人公ダグさんのブルースです。繰り返すギターフレーズがゴツンゴツンと硬い土を掘るようでお気に入りです。ギターソロに関しては、間奏に入る瞬間の大の叫びの勢いを殺さずに、僕なりに叫んでみました。
7 . 亡霊と影
過去はどうにも美しく見えてしまうようで、亡霊みたいについてくるのでなかなか振り払うのが大変ですが、そうしようとすればするほど離れないらしく、厄介なものですね。疲れます。この曲は珍しくレスポールで録りました。いい感じにハードな音になったと思います。ちなみにデモの状態から大幅に別曲へ变化した曲の一つです。
8 . Dreams
選択を迫られる時、楽な道と苦しい道があると思いますが、困ったことに茨の道のほうへ行くべきだと心の底で叫んでいることは多いと思います。それに目を瞑って楽な道を選ぶか、嵐に飛び込んでいくか。でも、いや、飛び込むべきです!突っ張ることが勲章になることもあるみたいですし、全力で応援したいと思います。ファズっぽいギターの音色が嵐のようで気に入っております。
9 . Beautiful
永遠であることより、一瞬のことを美しいと思ってしまうのは何故なんだろうと考えていたことがあり、一瞬のものは儚く、恐怖と歓喜、その他諸々の相反する感情が入り混じっているからなのではないだろうか、などと考えていたところ、大がこの曲を持ってきたので個人的テンションアゲの曲でした。音楽で、そういった答えの存在しないようなことを精一杯表現できたことが嬉しかったです。雷みたいなギターの音(個人的見解です)になりました。静と動、音空間をじっくり楽しんでほしい一曲です。
10 . おまじない
バンドサウンドから一歩引いた、いわゆる打ち込みのサウンドですが、ある意味挑戦の一曲になったなぁと思います。「優しさなんて本当は自分以外の誰のためでもない」自己中心的であること。その大切さを改めて実感する曲です。自己中心的だなんていうとマイナスなイメージを持たれると思いますが、僕は守るべきものであると思います。見返りなんて期待しない、求めない果汁100%の優しさ。祈りにも似た、こちら側が勝手に使うおまじない。
11 . Water Lily
大切な人がいるからこそ感じる寂しさ、孤独感。それはよく他の色んな作品の中で「失って初めて気づく大切さ」なんて言い方をされますが、そういう言い方するとちょっと冷たいなぁ、なんだかなぁと思っていてモヤモヤしていましたが、その点この曲が言っているのはもしかして「お互いがお互いに歩み寄ろうとすること」なのではないかと思ってからとても腑に落ちました。お互いの心の距離を決めるのはそういうことだとも思うし、孤独感なんていうものは遠ざけるべきマイナスの要素というよりかは大切にしまっておくか、テーブルの上にでも飾っていればいいんじゃないかなとも思いました。ギターは人間的というよりかは、なんというか理論的というか自然の法則的にといいますか、そんな感じです。程よい透明感と微かな温かみをもたせたサウンドになったと思います。
12 . 月のこどもたち
「月」という言葉通り、重力を1/6にしたようなギターにできたと思っております。人は一人では生きていけないなんて、ひどく有り触れた言葉かもしれませんが(一言で纏めるのは乱暴ですが)、僕は特に、頭で分かっているつもりでも何度も忘れてしまうことで、余裕が無くなると特に顕著で、こうして曲にして残すことができて嬉しいです。LAMP IN TERRENが以前より何度も伝えてきたことの一つに、「聴いてくれているあなたがいてはじめて音楽というものになる」というものがありますが、大きな内の部分だとしても、まさにその言葉を、ある一曲として、音楽として表現できたのではないかなと思っております。