『The Naked Blues』セルフライナーノーツ 〜中原健仁編〜 / 中原健仁
アルバムのセルフライナーノーツを書く。
「どんな曲ですか?」って訊かれれば返しやすいけど、
改まって書くとなるとなぜか、若干緊張してくる。なんだこれ。
こういうの文字にするのってなんか小っ恥ずかしい。
硬くなりすぎず、リラックスして書こう、そうしよう。
多分、超絶長くなるから、落ち着いた暇な時にでも読んでみてね。
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「I aroused」を聴くと、どこにいても一瞬でこのアルバムの雰囲気に飲み込まれる。
なんならまさに今、サイゼで一人、飲み込まれてる。
神聖さすら感じるピアノで始まったかと思えば「望まれなくていい」。
第三者的に聴くと「このボーカル大丈夫か」なんて思いながらも、
その先が気になって耳を澄ませている。
「あるがままで光る」というサビの歌詞がこのアルバムを象徴してると思う。
決意表明に思えて、気持ちが整う感じがする。
うん、やっぱり一曲目はこの曲だったんだな。
そのまま「New Clothes」へ。
この自然な繋がりがスタジオで出来た瞬間、
あまりの気持ち良さに何度も聴いた。病みつきになった。
最近は特に、この曲を演奏していると、
「この新しい声で、曝け出した自分自身で踏み出していく」
っていう大の覚悟を勝手に感じてしまって、
負けねえぞ、俺だって踏み出していくぜって思って高ぶる。
脳内イメージは、仲間と肩を並べて歩く〇〇レンジャーな感じ。
信頼しあって前に進んでいくぜって気分。
そして「オーバーフロー」で走り出す。
初めて歌詞をもらった時、なんとなく照れ隠しも含めて
「こんなに裸んぼになってしまって...」とか言ってしまったけど、
本当はそれがすごく嬉しかった。
「フルボリュームで叫ぶよ 君に愛されたい」。
あいつきっとこれ言うの恥ずかしいだろうな、
けど「The Naked Blues」の名の通り、
何も隠さずに伝えようとしてるんだな。
着飾らない真っ直ぐな言葉を放つ人に俺は憧れる。
その真っ直ぐさが最高に男らしくて、よりあいつが好きになった。
その上、コーラスパートまであるなんて...
至れり尽くせりかよ。アツさまでオーバーフローかよ。
思わず拳振り上げちゃう中原氏ですわ。最高。
ハンカチを用意する間も与えず「BABY STEP」。
どアタマのストリングスの時点で全俺が拍手喝采。
素晴らしいメロが続いて、最後は全員のコーラス。
本当にすべてが聴きどころだと思う。
けどこのサビメロは本当に大が頑張った。
スタジオで3人が囲んで大に歌わせまくった。
本当に色んなパターンで大が歌ってるにもかかわらず、
大屋「う〜ん...」
川口「もっといけるはず」
中原「もう一声!もう一声!」。
いじめか。こんな体育会系だったっけ俺ら。
めちゃくちゃ時間をかけて、その成果がちゃんと実ったと思う。
誰に聴かせても堂々と胸を張れる、まさしくLAMP IN TERRENの曲。
このアルバムはどれも歌詞が伝わりやすいと思うし、
何よりも、常に言葉と向き合っている大らしい。
「言葉にするには まだ程遠くて
想いばかりを募らせていく
行き着く先はいつも同じ
愛してるなんて 歯痒い言葉だけ」
感情っていうものを言葉で伝えることは本当に難しい。
ていうかもはや無謀とすら思える。
だけどこの「花と詩人」は、誰しもが持っているそんなモヤモヤを、
大が詩人として、しっかり言葉にしている。
これほど共感した歌詞はないかもしれない。
恋人だけじゃなくて、大切な人には絶対にこの曲を聴かせたい。
難しいレコーディングだったけど、純粋な想いを込められたと思う。
どの楽器もすごく良い音。
なんてしんみりしたところに「凡人ダグ」。
こういう流れが俺ららしくもあるし、強さでもある気がする。
個人的にこの曲は聞くとものすごく苦しくなる。
ダウナーになってる時にこれ聴いたらどうにかなりそうな。
でも、何かに期待して掘りまくった場所には何もなかったのに、
主人公の目が死んでない(俺の解釈では。)ところがすごく好き。
「そのうち見返してやるからな」。
ちなみにこの曲のベース、よく聴くとえぐいことやってるから
是非コピーしてみてほしい。弾けると病みつきになる。
ドゥードゥドゥドゥーデーデードゥードゥデドゥドゥデ!のとこ。
そして同じくコピーしてみてほしい曲上位の「亡霊と影」。
わかるよ。言いたいことわかる。だって俺が弾いてるんだから。
キモいよな。ベースがキモいよな。
けどこの、うねうねしたフレーズは結果的に、
「影」「揺らぐ視界」っていう歌詞によく合ってると思う。
ベースフレーズが言葉をより強くしてる。
スタジオで好き勝手なことをやって、それを大が整理して、
すごく気持ち良くなった。キモいけど。
何ヶ月か前、社会人1年目の後輩から連絡があった。
「まじでありがとうございます」
「なんだよ急に気持ちわりいな」
「俺、この1ヶ月、Dreamsのおかげで頑張れました」
上司からの理不尽なダメ出しに嫌気がさしていた時、
「Dreams」が支えになってくれたらしい。
正直、これほどシンプルな楽曲が響くのだろうかって不安があった。
だけど、その真っ直ぐさがより力になったと。
色んな人の意見を聞くたびに好きになる曲。
俺自身、アルバム製作中にこの曲に支えられた。
「叶わない夢だと知って
僕らは嵐に飛び込んでいく
今も輝いて 心を呼ぶ光の方へ」
歌詞に注目してほしいアルバムだけど、
特に「Beautiful」はサウンドにも注目してほしい。
音の最終チェックをしている時に、一番驚いたのがこの曲。
大がずっと「この曲は雷だ」と言っていて、
俺もそれを表現出来るように、メリハリを意識してフレーズを弾いた。
けど、ここまで雷になったのは、大の構築力とエンジニアさんの力が大きい。
雷の音をそのまま録音したんじゃないかってくらいの音。
2サビ後のゴロゴロ感、サビ頭の落雷感。
ミュージカルみたいな展開をする曲。
是非、良いスピーカーで大音量で体感してほしい。
「おまじない」のデモを聴いた瞬間、
最後のサビの転調が幸福感に溢れていて、
兄貴の結婚式が頭をよぎった。
アルバム発売前に兄貴がうちに泊まりにきた時、
何も言わずにしれーっと流したら、すごく気に入ってくれていて、
少しだけ運命じみたものを感じた。これが兄弟ってものなのか。
この曲の歌詞がとんでもなく好きで、
自分がこれを誰かに話している妄想をすると
うっかり泣きそうになる。我ながら引くわ。
「優しさなんて本当は 自分以外の誰のためでもない
時には嘘にもなる でも僕は君に使う ほんの少しぼくのため
君に笑ってもらうための おまじないを使える 」
こんなこと言ってみてええ!!!さ、寂しいいい!!!
「寂しさはきっと愛しいもの 繰り返しながら埋めていくよ」
やさしいかよ!!!イケメンめ!!!
「Water Lily」のこの歌詞が送られてくるまで、
俺にとって寂しい気持ちっていうのは
ただ取り払いたいものでしかなかったけど、
こんな考え方もあるんだなって気付かされた。
この曲はアルバムに入ってからより輝きを増した気がする。
バラードというよりは、自然に体が揺れるミドルチューン。
バンドとして新しいサウンドに挑戦した曲でもあって、
ライブと音源で違った味が出てると思う。
人肌を感じるような演奏を心がけてる曲。
あと真ちゃんのギターソロ必聴。再生するたびに楽しみなポイント。
最後は「月のこどもたち」。
この曲は、LAMP IN TERREN自身であり、
その音楽を聴いてくれる人たちの歌だと思う。
一人一人が持つ小さな光でお互いを照らし合えば、
大きな光を放てるんじゃないかという。
だから、「I aroused」で始まって、
この曲で終わることにすごく納得がいく。
大事なことがたくさん詰まった曲。
これからも傍で照らし合えたらいいな。
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あとがき
中学生の頃、GRAPEVINEの「イデアの水槽」というアルバムに出会った。
いきなりなんの話じゃいって感じだけどまあ聞いて。
一曲目の「豚の皿」という曲は、ぶっちゃけ、中学生の俺からすると
夜道に流れてきたら小走りで帰りたくなるほどダークだった。一曲目なのに。
だけど衝撃的だった。
俺がずっと聴いていた音楽は、こんな始まり方は絶対にしなかった。
だから本当によく聴いた。全曲めっちゃ聴いた。
それなのに今聴いても、やっぱり同じように衝撃を受ける。
多分、これからもずっとそう。
何が言いたいかっていうとつまり、
このいつまでも色褪せない"新鮮な衝撃"が、
このアルバムにもあると思った。
今回改めて聴いてみて、
初めて良いと思えたところはやっぱり今でも鮮度バツグンに良かった。
それだけじゃなくて、新しい発見もあった。
色褪せるどころか、聴くたびに鮮やかになっていくなんて。
胸を張って言える。これは自信作だ。
いつまでもこのアルバムを聴いてほしい。
何かでつまづいてしまった時、踏み出す勇気が出ない時、
きっと、背中を押してくれるはず。
うん。よし。それじゃ!
最後まで読んでくれてほんと、ありがとう。
「The Naked Blues」、自由に楽しんでね!