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2016.05.01

魔法。 / 松本大



2016.05.01



5月3日に1st Single『innocence/キャラバン』をリリース、という事で今日はシングルについて書こうと思っています。しばしば脱線するかもしれませんが。



初めてシングルをリリースだし、今回はそれに加えて初めて4人での作品を出せるので、約10年越しにちゃんとひとつの目標の線を踏めるなぁと少し感慨深かったりします。



そもそも、まだ知らない人もいらっしゃるかもしれませんが僕らは元々4人で音楽をやっていました。新しく加入した「真ちゃん」こと大屋真太郎は僕がこのバンドをやるきっかけになった人であり、6歳からの友達でもあり、僕にとっては人生で最も付き合いの長い人のひとりです。もう知らない事もないなぁというくらいには、家も近所で登下校を共にしたし、小学4、5年生の頃には掃除の時間に箒でじゃれ合って彼の前歯折ってしまった事もあったし(不可抗力ではあったけどあれは本当に申し訳なかった)、よくキャッチボールをしたり、庭で焼き芋を食べたり、元旦には初日の出を見るべく登山したり、と思い出話を並べだすと皆はこのブログを最後まで読めないだろうなぁと思う程にあります。それは今後ラジオやライブで少しずつ話す機会があるかもしれませんね。




そんな感じで4人としては初の作品、バンドとして初のシングル、あまり長く話すとそれもそれで取り留めのない文章にもなり兼ねないのですがよかったらがんばって読んでください。





M-1「innocence」



この曲で僕は初めて「書き下ろし」を体験させていただきました。とはいってもそれほど大層なものでもなく、ひとりの人間として何かの作品に出会った時に生まれる想いや考えが、僕で言う所の音楽で形になった物です。今までも沢山そういう流れで曲を書くのはあった事ですが、タイアップとして世に出て行くのは初体験で、「亜人」ファンの皆さんにどう届くのかは少し不安ですが、やっぱり自慢の曲なのでワクワクしている方が強かったりします。



去年の、ちょうどこの時期に話を頂いて、まず作品を読ませていただきました。最初のデモ音源の日付けが"2015.05.11"となっていたので割と早く欠片は生まれていたみたいです。書いていた時の事はあまり覚えていませんが、漠然と「もしかしたら今生きているこの場所は選ぶ事ができなかったのかもしれない」という感情が暗く渦巻いていたのはよく覚えています。



例えば用意された椅子があり、良くも悪くもいずれ必ず来る終わりも用意されている中にいて、「運命」という言葉は一度存在を現せば絶対に、永遠に敵わない、何をどうしても運命の手柄になり、運命のせいにできるという圧倒的な存在を前に、鉛筆を動かす気力もなくなり、初めの方はとても悲観的な言葉が並んでいました。曲とはしばらくそのまま格闘し続ける事になり、秋ごろに会社から「そろそろ曲出して」と言われて渋々そのまま提出したような覚えがあります。その時期はまったく曲が書けない時期でもあり、ワンマンツアーで披露した「時の旅人」という曲とも大格闘していた時期でもありましたね。2nd アルバムの『LIFE PROBE』をリリースした後から「もう絞っても出ない雑巾」状態が続いていました。笑



『LIFE PROBE』というアルバムには「はい、もう次に行きなさい」と背中を押されるような、「結果出すまで帰ってくんな」と言われるような作品でもあり、自分がバンドをやっていく上での中心点を示した作品でもあり、作家として新しい扉を開かねば自分の過去に顔向けできんなという考えが頭の中をぐるぐる回っていて、「innocence」は今までにないくらい心の中で自分と向かい合った曲になったと思います。曲の心臓部分、テーマが今まで以上に難題だったというのもあると思いますが。結果、新しい扉は開く事ができたと思っています。とっても長かった。今だから言えるけど、とってもしんどかった。



アレンジにはピアノが入っていますが、最初の方のデモからピアノは鳴っていて、それを弾くというのも初体験でした。ピアノで曲を作る事はあっても、最終的なアレンジではいつも引っ込む感じになっていたので。「王様のひとり芝居」とかはピアノからできた曲だったりします。今回は最初から最後まで鳴っています。バンドでも長い間話し合ってこの形になりました。この曲は特に、メンバーにとっても核心をついた物になったんじゃないかな。4人だからできた物ですから。



もう既に長い記事になってしまっているという事に気付きつつ次へ。






M-2「キャラバン」



真ちゃんが帰ってきてから初めて書いた曲がこの曲になります。ちょうど初ワンマンツアーが終わった1ヶ月後とか。12月とか。びゅーんと書けました。元々は違うきっかけで書いた曲なのですが、デモを上げた所メンバーがとても気に入っていたというのもあって、じゃあ初シングルに入れてもらおうぜ、という流れで今作に入る事になりました。



書くかどうか迷ったのですが、この曲が書けた時の仮タイトルは「こどもの国」というタイトルでした。純粋な気持ちを忘れないでいような!という歌詞が書かれていたからそうなったのかと思います。最初はメロディと言葉が同時に出てきて、お互いに共鳴していくように曲が磨かれていくのがとても楽しかったです。第三者の気持ちでワクワクしているのに曲を書いているのは自分、というよくわからない心持ちでした。



そんな心持ちで書いたにも関わらず、冷静に見つめると「これは俺の唄じゃないか」と気付かされ、レコーディングを終えると「これはバンドの唄じゃないか」と気付かされ、バンドの新しい門出を祝ってくれるような、そして今後の僕らの旅に携える唄になってくれたなぁ、と思いました。



ここに記すもの以外にも言葉や意味はたくさんあるのは前提で、僕にとって音楽は魔法みたいなもので、背伸びしていた自分や、理想、願いが言葉になって、メロディに乗って、ある意味自分を騙すように歌い続けた事はいつか"本当"になっていき、今自分はここにいる事ができています。それが例えると僕にとっては魔法のような物だと思えるのです。この旅路に力として機能する曲もあれば、絵画のように何かを放っている曲もあれば、物語のように楽しめたり、様々な在り方は存在しますが、そのどれもが魔法のような、光のような物を放っていて、どれもが主役で、どれもが聴いている僕らを、歌っている僕らを主役にさせてくれるような音楽であって欲しいなぁなんて思うのです。よくわからなかったらごめんね。



皆に届いたら「これは皆の唄じゃないか」なんて思えたらいいなぁ。なんとなくもうそんな事を思っている僕もいますが、皆さんにとって僕らの音楽が、何よりも近くで皆さんの心と寄り添っていられる物であれる事を強く願っています。



メモ帳に「キャラバン」という文字だけを残していて、吸い込まれるように「これだ」と思い、このタイトルに決めました。あの瞬間はとてもすっきりした。






M-3「とある木洩れ陽より」



昨年の大晦日にふっと書けた曲です。自宅近くの公園ではよく子供がワイワイやっているのですが、それを眺めながら、その公園に生えている木になったつもりで書いていました。決して動かず、成長はしても基本僕らの視界で主役になる事はなく、「公園」という景色を担っているひとつで、普段僕らは気にも留めない事の方が多いと思います。だけどね。きっとそれを見ている僕らの受け取り方次第ではどんな風にも映るののだと思います。悲しい気持ちでいれば、どんな景色も項垂れて見えるし、楽しい気持ちでいれば、どんな景色も煌めいて見えるように、どんな事にも言えると思う。少なくとも僕にとってはそう。そんな中でもしもそんな景色を担うひとつひとつが「貴方の目には美しく映っていたい」なんてがんばってたらどうしようって馬鹿馬鹿しくても本気で考えていました。



この曲に関しては、色々書くのがすごく恥ずかしいです。歌詞をそのまま受け取ってもらっても全然いいのですが、ちょっとした仕掛けがあります。公園で書いた曲だし、木の気持ちで書きました。目の前にいたのは子供たちでしたが、だけど、眺めていたのは聴いてくれている皆さんでした。



書いたけど、あんまり気にせず聴いてくださいね。恥ずかしいので。笑






さて。かなり長くなりました。がんばって読んでくれた皆さん、本当にありがとう。ぜひ手にとって、聴いていてくれると嬉しいです。



作品が物として、皆さんの部屋に並べられて、音楽が皆さんの心の側で鳴っていてくれたらいいなぁ。つまり買ってねってことなんですけどね。やっぱり形として側に置いていて欲しいぜ。