高速道路にて。 / 松本大
高速道路にジャイアンがいた。あれはジャイアンだと思う。
ジャイアンを前に周囲の車たちは次々とスピードを落とし、道を開けるのだ。
それはもう「モーセの十戒」のように。
ジャイアンはまぁまぁなスピードを出して走っていた。
110km/hくらいだろうか、メーター見た感じ。
そのくせ我々がそのぐらいのスピードで走れば、きっと赤く光って怒る。
しかもだ。奴はこの一帯から離れようとしない。
スピードを上げては、スピードを落として戻って来る。
そうか。釣っているのだな我々を。
掛かろうもんなら紋所を掲げて取り締まるに違いない。
その手には乗らない。俺は運転もせず、ひとり黙々と妄想を展開している。
そもそも俺には免許がない。ドライバーの気持ちなんて知らないのだ。
原動付自転車乗りの気持ちしかわからない。
ああそうだ。ジャイアンはここにでもいるじゃないか。
自分が鋼の車体に守られているのを良い事に、剥き出しの我々を後ろから煽ってくるあいつら。
スピードが遅いのは最早仕方がない。ルールですから。
話を戻す。
そんなこんなで高速道路のGは今、僕の目の前にいる。
車4台の縦列の先頭にいる。
なんだこれ。RPGか。
高速道路2車線で、片方に一列に並んで走る車達。おかしな光景。
ああーーーーーっと!!!!
今まさに列から3台目の車が追い越し車線に入った!!
抜くのかGを!!ついにいくのか!!とても勇敢だ!!讃えたい!!
おおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!
いけえええええええええええええええ!!!!!!
えええええええぇぇぇぇぇ...............
.............................。。。。。
............刹那、Gは華麗に高速を降りて行った。
平安が訪れた。隣でドライバーも「よしっ」とか言ってホッとしている様子。
水を得た魚みたいだ。皆それぞれ自由なドライビングで広がっていく。
ああ、Gが走り去っていくよ。いってしまえ。もう。
なんだこのやりきれない気持ちは。
抱えているのは俺だけなのか。
ぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ
今日は名古屋。